2015 Fiscal Year Annual Research Report
ジェネティックな変異とエピジェネティックな変異の解析による新規酵母耐熱化法の構築
Project/Area Number |
14J01413
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
里村 淳 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 酵母熱耐性 / 次世代シーケンサー / エピジェネティクス / バイオエタノール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は段階的に育種した熱耐性酵母(Saccharomyces cerevisiae)と育種途中株の変異を解析することで、高温エタノール発酵を可能にする変異を同定することである。さらに、酵母に熱耐性を付与するエピジェネティックな変異も併せて同定する。 1. これまでに、CDC25遺伝子上の4種類の変異が酵母熱耐性に寄与することを同定してきた。今年度はその分子機構の解明を行った。特にこれらの変異はcAMP/PKA経路を抑制することで、種々の転写因子を活性化して熱耐性を誘導することが明らかになった。また、これらの変異を導入したCDC25変異株はグルコースからの高温エタノール発酵能が2倍以上向上していた。 2. また、酵母熱耐性においてヒストンジメチル化の変化が関わっている示唆を得た。熱耐性との関連とジメチル化に関わる因子の同定は3年目に行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由:予定通り熱耐性と高温エタノール発酵に寄与する遺伝子変異とその分子機構を同定できたため。 前年度までに熱耐性に関わるCDC25遺伝子上の変異を4種同定してきた。これらの変異を育種親株(野生株)に再導入すると、親株エタノール発酵が阻害される39oCで、再構築株は39oCにおいても30oCと同様のエタノール発酵能を示した。 Cdc25pは細胞内のcAMP濃度を間接的に調節することで下流のcAMP-dependent protein kinase (PKA)シグナル経路を制御する。野生株では定常期やストレス下において、Cdc25pの働きが抑制されて、cAMPの濃度が低下する。cAMP濃度が低下すると、ストレス応答性転写活性化因子のMsn2pやMsn4pが活性化されて、ストレス耐性が誘導される。実際に30oCにおいて、再構築したCDC25変異株の細胞内cAMP濃度は野生型に比べて低下していた。さらに、Msn2pとMsn4pに転写制御される熱ショックタンパク質をコードする遺伝子やトレハロース合成遺伝子の転写量は30oCにおいて野生型よりも発現誘導されていた。さらに、CDC25変異株のシグナル伝達経路を詳細に解析することで、これらの株では、熱耐性に関わるcAMP/PKAシグナル経路が活性化されていることを発見した。特にこのシグナル経路の下流に存在するMsn2p、Msn4p、Cin5p、Yap1p、Rlm1pといった転写因子群が活性化されており、変異Cdc25pは熱応答だけでなく、協調的に様々なストレス応答を誘導することで、ストレス耐性を誘導していることが示唆された。 2. エピジェネティックな変異の解析 これまでに、上記の育種株とその育種親株において、ヒストン(H3)のジメチル化量が変化していることを明らかにしてきた。ヒストンジメチル化誘導に関与している因子は現在探索中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
構築したCDC25変異株がグルコース以外の糖の資化性が向上していることが示唆されているため、ガラクトースなどのその他の糖の資化性を評価する。 また、エピジェネティックな変異の解析では、ヒストンH3のジメチル化の変化が熱耐性に寄与しているか、どのような因子が関わっているかの二点に絞って、研究を進めていく。
|
Research Products
(6 results)