2015 Fiscal Year Annual Research Report
南スーダンにおけるキリスト教信仰覚醒運動:人々の内戦、移住の経験とグローバル化
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14J01493
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飛内 悠子 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | キリスト教 / 北部ウガンダ / 南スーダン / 信仰覚醒運動 / 難民 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、前年度に行った調査の整理を行い、それをふまえて日本ナイル・エチオピア学会年次学術大会において口頭発表を行った。ここで得られたコメントなどを参考にしながら、今年度の調査の準備を進め、8-9月にかけてウガンダ共和国アジュマニ県において現地調査を行った。調査の目的は、①アジュマニ県における南スーダン難民の歴史と現況を明らかにすること、②キリスト教信仰覚醒運動、特に若年層を惹きつけている福音派、もしくはペンテコステ的な運動の実態と参加者の詳細についてを明らかにすることであった。それぞれに関して明らかになったことは以下のとおりである。 ①南スーダン難民、特に南スーダン共和国中央エクアトリア州カジョケジ郡(現イエイ川州カジョケジ郡)を故地とするクク人のアジュマニにおける歴史と生活を明らかにすることができた。 ②アジュマニにおけるキリスト教信仰覚醒運動の新たな一面を見出すことができた。この地域には報告者がこれまで調査を行ってきた東アフリカ信仰覚醒運動とは別に1950年代より旧宗主国イギリスから伝わり、活動を継続している学生主体の超教派的キリスト教伝道集団スクリプチャー・ユニオン(SU)があった。SUはアジュマニにある多くの中等学校にクラブとして存在するが、そのネットワークは中等学校に留まらず、小学校、大学にまで及んでいる。参加者は全員が信仰覚醒者であり、所属教派は多様である。このSUがアジュマニにおける信仰覚醒運動の展開に大きな影響を及ぼしていること、そして南スーダン難民にもSU参加経験者が多いこと、さらに各校のSUの具体的な活動内容などが明らかになった。 帰国後調査成果を整理し、口頭発表を行った。 2016年2月にはスーダン共和国ハルツームにおいて南スーダン出身者たちの教会活動に関する調査を行い、2013年の南スーダンでの紛争の勃発後のハルツームの南スーダン出身者の様子を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2度にわたる現地調査によって一定の成果を挙げることができたものの、前々年度の分をも含めた調査の成果を公刊することが出来なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度までの成果公刊の遅れを取り戻しつつ、現地調査を行う。前期は5月の日本文化人類学会、6月のアフリカ学会、そして7月に国際強制移動学会において成果の口頭発表を行うと共に、『文化人類学』への投稿論文を準備し、投稿を行う。そのうえで8-9月は北部ウガンダにおける調査を行う。調査目的は前年度に引き続き東アフリカ信仰覚醒運動の伝播、活動における移民/難民とホストとの関係を明らかにすることであり、そして前年度得られたスクリプチャー・ユニオンに関する知見をさらに深め、東アフリカ信仰覚醒運動との異同を明らかにし、これらの運動をキリスト教信仰覚醒運動としてウガンダ、そして南スーダンのキリスト教史に位置づけることができるかどうかを検証することにある。 調査より帰国後、調査成果を整理し、これまでの調査とも照らし合わせ、北部ウガンダと南スーダン南部におけるキリスト教信仰覚醒運動に関する論文を執筆する。
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