2015 Fiscal Year Annual Research Report
新たな腸管屈曲セオリー -時空間設計を担う遺伝子群の解析-
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14J01673
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾之内 佐和 北海道大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 十二指腸空腸曲 / 屈曲形成 / 形態的アシンメトリー / 細胞外基質 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管形態形成は腸管の屈曲により特徴づけられ、胎子期において屈曲はある一定の部位及び時期に一定方向に出現する。このことから、胎子腸管には屈曲予定部位があり、その屈曲を制御する遺伝子発現メカニズムが存在すると考えられる。本研究ではマウス十二指腸空腸曲(DJF)を用い、胎子腸管の屈曲形成機序の解明とそれを担う分子群の選抜、その作用時期・領域及び機能を解明する。 平成27年度は様々な形態変化に関与する細胞外基質に着目し、その局在をDJF屈曲内-外側で比較したので、その結果について報告する。 1)アルシアンブルー染色においてプロテオグリカンの局在を比較したところ、DJF形成前では屈曲外側で、形成後では屈曲内側で強い染色性を示した。このことはDJF形成に伴ってプロテオグリカンの分布が変遷していることを示し、形成との関与が示唆される。2)細胞移動や細胞形態に関与する細胞外基質であるFibronectin、Collagen I、Tenascinの免疫染色によりその局在を比較したところ、前二者はDJF形成後の内側で、後者はDJF形成前のみ発現し、内側で強い染色性を示した。3)基底膜を構成する細胞外基質であるCollagenIV、Lamininの免疫染色によりその局在を比較したところ、DJF形成前では中皮基底膜における屈曲内-外側の発現差が顕著であった。この部位において細胞接着装置N-cadherinの発現が屈曲内-外側で異なっており、これらの細胞外基質が中皮細胞の形態に関与することが示唆された。また、DJF形成後では屈曲内側における血管の増加により、血管内皮基底膜に発現する基底膜が内側で強い染色性を示した。 これらの細胞外基質のDJF屈曲内-外側における局在差は過去に報告したDJFの形態的アシンメトリーの結果と関連性があり、細胞外基質がDJF形成に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度はDJF内-外側を用いた網羅的遺伝子発現解析を行う計画であったが、微量サンプルのため適切な回収法を目下検討中であることから、やや遅れていると判断した。しかし、DJF形成に関与する候補因子として細胞外基質に着目し、DJF内-外側における発現差を示し、学術論文として発表することができた。また、摘出腸管器官培養法の条件検討を行い、有効な条件を得ることができたことから、今後の研究への活用に向け準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は摘出腸管器官培養法によって培養した腸管の性状を解析し、培養法の確立を確認する。その後、培養法を用いてsiRNA投与等の条件でDJF形成を観察し、これまでの研究で候補としている因子についてそのDJF形成への役割を解析する。また、網羅的遺伝子発現解析のために、レーザーマイクロダイセクション法による効率的なサンプルの切り出し、少量サンプルからの効率的なRNA抽出キットの検討を継続し、DJF屈曲内-外側における遺伝子発現差を解析する。
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Research Products
(3 results)