2014 Fiscal Year Annual Research Report
不斉リン原子を構成要素とする光学活性分子の創製と高分子・超分子化学への応用
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14J02401
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 亮祐 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | クラウンエーテル / ホスト-ゲスト化学 / P-キラルホスフィン / 不斉リン原子 / 不斉リン化合物 / ホスファクラウン / 環状リン配位子 / キラル化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
クラウンエーテル誘導体はその環内部に様々なカチオン性ゲスト分子を内包することができるが、環骨格に不斉リン原子を有する光学活性ジホスファクラウンのホスト-ゲスト挙動に関してはこれまで調べられていなかった。そこで代表的なゲスト分子であるアルカリ金属イオンとの錯形成を行い、環サイズの違いによるゲスト分子に対する選択性の変化を確認した。その結果、通常の配位点が酸素原子のみからなるクラウンエーテルとは、同じ環員数であるにも関わらず、その選択性が異なることが明らかになった。 次に環骨格に不斉リン原子を4つ有する光学活性テトラホスファクラウンの合成を検討した。その結果光学活性テトラホスファクラウンの基質に応じた合成法を確立することに成功した。キラルな2級ビスホスフィンと求電子剤との反応を鍵反応とし、求電子剤が柔軟な構造を有する場合は段階的な反応により、剛直な構造を有する場合は2:2での環化縮合により1ステップで目的物を得ることに成功した。 次に環骨格にピリジン環を有する光学活性ジホスファクラウンの合成と不斉認識を検討した。光学活性ジホスファクラウン合成法における環骨格への官能基導入の容易さを利用して、プロトン性ゲスト分子と強く相互作用するピリジン環をジホスファクラウン骨格へ導入した。得られたジホスファクラウンは、キラルアンモニウム塩やキラルカルボン酸と相互作用し、それらエナンチオマー間で異なるNMRスペクトルを与えた。このことから、光学活性ジホスファクラウンの不斉認識能が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画とは若干順番に違いが生じているが、予想以上の結果が得られている。 光学活性クラウンエーテル誘導体であるホスファクラウンへの様々な環骨格の導入とその基本的な性質を明らかにすることができた。通常のクラウンエーテル同様、ホスファクラウンはアルカリ金属イオンを環骨格内部に包接することができ、環サイズにより選択性が変化することが明らかとなっている。また、キラルなアンモニウムイオンに対する不斉認識能も確認された。 更に当初の予定を上回る種類の誘導体の合成に成功しており、光学活性ホスファクラウンの応用に向けての準備は滞りない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた各種ホスファクラウンの遷移金属やアルカリ金属イオンとの配位能をさらに調べ、不斉反応触媒の配位子や超分子形成のためのビルディングブロックとしての応用を検討する。 また不斉リン原子によって環骨格へ誘起されるキラリティーを、様々なキラル分子をターゲットとした不斉認識や、円偏光二色性や円偏光発光といったキロプティカル特性の測定により調査する予定である。
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