2014 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素不飽和三員環シクロトリシレンを前駆体とした新規な不飽和ケイ素化合物の合成
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14J02421
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大森 悠 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 有機化学 / ケイ素ケイ素二重結合 / ジシレン / シクロトリシレン / 三員環 / アジド / アミド / 窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロプロペンのケイ素類縁体であるシクロトリシレンの合成・単離に成功して以来、三員環骨格内に活性なSi=Si二重結合を有するシクロトリシレンの反応性の研究を行ってきた。最近ではシクロトリシレンを前駆体とした高歪み化学種ビシクロ[1.1.0]ブタンおよびその関連化合物の性質を明らかにし、歪んだSi―Si結合と橋頭位原子団との相互作用を見出している。本研究では高歪みケイ素不飽和化学種の性質解明を目的に、シクロトリシレンとアジド類との反応を検討した。 シクロトリシレンに対してアダマンチルアジドを作用させたところ、形式的にアダマンチルナイトレンが二分子付加したジアザトリシラビシクロ[1.1.1]ペンタンが得られた。一方トリメチルシリルアジドでは一分子付加体、アザトリシラビシクロ[1.1.0]ブタンが得られ、その構造を各種スペクトル及びX線結晶構造解析により明らかにした。両者の反応性は、アジド上置換基の嵩高さに起因したビシクロ環骨格の開裂しやすさにより、変化が生じたものと現在考えている。 次により多彩な官能基化を目指してアジ化ナトリウムとの反応を検討したところ、予想されたビシクロ骨格ではなく、シクロトリシレンの骨格―置換基間結合にNa-N部位が挿入したアミドシクロトリシレンが得られた。X線結晶構造解析によって得られたアミドシクロトリシレンの分子構造では、β位sp2ケイ素の著しいピラミッド化が観測された。加えて29SiNMRスペクトルではβ位sp2ケイ素の異常な高磁場シフトが見られ、固体および溶液状態におけるアミドシクロトリシレンのβ位ケイ素がsp3ライクな混成状態になっていることを明らかにした。 以上の結果はケイ素-ケイ素二重結合の反応性の化学及び高歪みケイ素不飽和化合物における置換基の影響について新しい知見を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では当初目的化合物であるアザトリシラビシクロ[1.1.0]ブタンの合成を達成し、その構造解析およびスペクトル解析に成功した。加えてシクロトリシレンとアジ化ナトリウムの反応から、予期せぬ生成物としてアミドシクロトリシレンが得られることを見出し、その分子構造をX線結晶構造解析および各種スペクトル解析により明らかにした。本反応はケイ素不飽和化学種の置換基の直接的アミド化に成功した初めての例である。これらの結果は当初研究目的を十分に満足する結果だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初研究目的を達成するため、合成したアザトリシラビシクロ[1.1.0]ブタンの性質を明らかにする。具体的にはアザトリシラビシクロ[1.1.0]ブタンの反応性を種々検討し、理論計算を含めた考察を行う。加えて新規に見出したアジ化ナトリウムとシクロトリシレンの反応の詳細を明らかにするため、その条件検討を行う。アミドシクロトリシレンの反応性についても種々検討し、アミドとSi=Si二重結合の共役による影響を反応性の観点から明らかにする。
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