2014 Fiscal Year Annual Research Report
フタロシアニン多層積層型錯体を用いた分子デバイスの創出および新規物性の開拓
Project/Area Number |
14J02656
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀井 洋司 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 単分子磁石 / テルビウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標である”金基盤上に配列した高積層型錯体による単分子スピンバルブ”の実現を目指し、真空蒸着に対して安定なフタロシアニン多層積層型錯体の合成を試みた。その際、以前の研究計画よりも優れた分子設計を思いついたので、それに従って合成を行った。積層型錯体を合成するにあたり、配位子として無置換フタロシアニン(Pc)とターシャリーブチル置換フタロシアニン(tertBuPc)の2種類を用いた。いずれのフタロシアニンも安定であり、Pcは基盤への付着性を高める平面性を有し、tertBuPcは錯体自体の溶解性を向上させる効果がある。今回合成した4層・5層錯体はいずれも溶媒に対して高い溶解性をもち、カラムクロマトグラフィーを用いた容易な精製が可能であった。現在これら錯体を精製し、東北大学多元物質科学研究所 米田忠弘研究室の協力のもと基板上着を試みている。 また、すぐれたデバイス作成のためには高温で動作する単分子磁石が必要となる。したがって単分子磁石の性能向上についても検討・実験を行い、新規にclamshell型の4層積層錯体を合成した。この錯体は、clamshell型のフタロシアニンを用いており、2つのTbPc2錯体が共有結合により連結した構造を有する。このようにすることで、Tb周りの配位環境の対称性を落とすことなくTb間に弱い相互作用を働かせることができると予想された。この錯体の溶液中での磁気特性を測定したところ、低温域において磁化率の上昇が見られたことから、TbPc2ユニット間に弱い時期双極子相互作用が働いていることが示唆された。溶液中での測定であることから、このTb間相互作用は分子内TbPc2ユニット同士の相互作用であると考えられた。また、この錯体は10 K以上の温度領域においても磁気ヒステリシスを示した。これは孤立したTbPc2の値(1.8 K)と比較して大幅に高い温度である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は主として化合物の合成に力を入れたが、その際により簡便に実現可能な分子設計を思いついたことから、単分子ピンバルブに関するテーマについては研究がスムーズに進んだ。 一方で、Metal-Organic Frameworks(MOF)表面にTb錯体を導入する第二のテーマでは、Tb錯体形成反応の際にMOFの分解が起こってしまい、研究が進展しなかった。 以上の点を踏まえ、研究全体の進歩状況はやや遅れいていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
単分子スピンバルブの実現をめざし、金基板上への積層型錯体の蒸着を試みる予定である。 また固体表面へのTb錯体形成に関しては、高安定性を示すようなMOFを用いることで、MOFの分解反応を抑制しつつTb錯体の導入を試みる予定である。
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Research Products
(6 results)