2015 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア外膜上での抗ウイルスシグナル伝達機構の構造機能解析
Project/Area Number |
14J02861
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐々木 理 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 自然免疫 / ミトコンドリア / カスパーゼ / インフラマソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアを介した抗ウイルス自然免疫応答に関する研究は、近年の新型インフルエンザ問題も重なり非常に大きな注目を集めており、特にこの免疫応答時におけるキープレーヤーの一つMAVSに関して、詳細にその役割を明らかにすることは学術的に大きな意味をもつと考えられる。これまでに、MAVSは30種類以上におよぶタンパク質と相互作用することが明らかになっている。本研究では、生物発光現象を用いて生細胞内での分子間相互作用解析を行うことが可能なBRETシステムにより構造生物学的な解析を行い、MAVSインタラクトームの構成因子の相互作用を網羅的に解析する。さらに、蛍光イメージングやレポーターアッセイのような細胞生物学的な方法も用いて、細胞内におけるMAVS活性化・不活性化機構の構造基盤解析を目指す。本年度は、申請書に記載したように、MAVSのポリクローナル抗体を用いたプロテオーム解析および本研究の新たな応用分野として、炎症性カスパーゼのLPS依存的な複合体形成解析を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内における非自己認識系による免疫応答では、ウイルス感染に対する免疫応答も重要であるが、それと同様に、細菌のような様々な病原体に対する免疫防御応答も重要な役割を担っている。特に細菌に対しては、細胞外に存在してきた細菌の部分構造を認識するToll-like Receptors(TLRs)を介した一連の免疫シグナルカスケードがよく研究されてきた。さらに近年、細胞外だけでなく、細胞内に侵入してきた細菌の部分構造に対しても、NLRs(NOD-like Receptors)を中心とした巨大複合体(インフラマソーム)を形成して、最終的に炎症性カスパーゼの活性化が引き起こされ、最終的に速やかな細胞死が起こることが明らかとなってきた。 さらに非常に興味深いことに、通常のインフラマソーム経路と異なり、一部の炎症性カスパーゼ(caspase-4/11)が、NLRのような細胞内の分子センサーを一切介することなく、グラム陰性菌の表層成分であるリポ多糖(LPS)と直接結合し、LPSを足場として複合体を形成することで自己活性化を起こし、最終的に細胞死を引き起こすことも明らかとなりつつある。この一連の経路は、他のインフラマソーム経路とは異なるもの(non-canonical)であり、今のところin vitro系による報告にとどまっている。そこで今年度は、本研究にて構築したBRETシステムを応用し、LPS依存的にカスパーゼが複合体形成をする様子をBRETを用いて解析することを試みた。その結果、今年度中に論文投稿につながる新しい知見を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験によって、BRETを用いてLPS依存的なcaspaseの複合体形成が解析できることが明らかとなったため、さらにBRETを生かした詳細な解析結果を得ることを試みた。まず、caspase-4/11の複合体形成がリガンドの構造にどの程度依存するのかを調べるため、様々な菌類由来のLPSを生細胞に導入した際のBRET由来の蛍光強度の変化を解析することを試みた。また、細菌が細胞内に感染した際、細菌由来のLPS上でcaspaseが多量体形成を行うことはin vitro系による解析においても広く知られているが、その生細胞内における詳細な解析は行われていない。そこで、これに対しては以前にミトコンドリア膜タンパク質のBRETを用いた解析手法を応用することによって、新しいデータ収集に努めた。以上の結果は、今年度中に論文としてまとめ、投稿を行う予定である。
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