2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J03031
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福田 夏希 熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 一本鎖抗体 / 終末糖化産物 / ヒト血清アルブミン / Sortase A / 血中滞留性 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病合併症、動脈硬化症に関与する終末糖化産物(AGEs)の生体内分布を明らかにするために、AGEsに特異的な一本鎖抗体(scFv)を用いた生体イメージングを目指している。IgG全長抗体に比べてscFvの分子量は約27kDaと小さく、短時間で血中から除去されてしまうので、scFvの形状ではイメージングに用いることは難しい。本年度は、AGEs構造体の一種であるGA-pyridineに特異的なscFvにヒト血清アルブミン(HSA)を融合させ、scFvの血中滞留性の向上を試みた。scFvは大腸菌による調製が可能であるが、HSAは17組ものジスルフィド結合を有しているために大腸菌での発現が困難である。そこで、HSAをピキア酵母による分泌発現で調製し、Sortase Aを用いた酵素的連結法によって融合分子scFv-HSAを作製した。連結反応により生成したscFv-HSAと未反応のscFv、HSAとの分離のために、アフィニティータグを付加させたコンストラクトについても検討した。アフィニティー精製により未反応タンパク質と分離した後、ゲル濾過クロマトグラフィーによって純度の高いscFv-HSAを得た。このscFv-HSAがscFv単独と同様にGA-pyridineに対する結合親和性を保持していることを表面プラズモン共鳴法(SPR)により確認した。また、RI標識したscFvおよびscFv-HSAをマウスに投与した結果、1時間後にはscFvがほぼ全て血中から除去されたのに対して、6時間後でもscFv-HSAは投与量の約50%が存在していた。また、scFv-HSAをマウス血清と混和して37℃にて静置した後、ウエスタンブロッティングを行ったところ、scFv-HSAは分解されなかった。よって、HSAとの融合により血中滞留性が向上し、scFv-HSAが生体内イメージングに応用できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に引き続き、カルボキシルメチルリジン(CML)に高親和性を示す変異体の獲得を目指してファージディスプレイ法を行った。しかし、scFv遺伝子ライブラリーを持つ大腸菌の増殖が通常に比べて遅くなり、scFvを提示したディスプレイファージが得られなかった。大腸菌株の種類、ファージを分泌させる際の温度や時間など様々な条件検討を行ったが、ディスプレイファージは得られなかったことから、CML特異的scFvの発現が大腸菌内で何らかの毒性を示す可能性が考えられた。この問題を解決するには多くの時間が必要であると判断し、申請書にも記載していたAGEs構造体の一種であるGA-pyridineに特異的なscFvを用いて、生体内イメージングへと進めることにした。AGEs構造体を複数計画していたのは、得られた結果の比較ができることを考慮していたが、scFvを用いたAGEs測定法の開発が最優先であるため、GA-pyridineのみでも現状では支障はない。 また、当初はタマビジン(TM)などのアビジン様タンパク質とscFvを連結させた融合抗体によるイメージングを計画していた。しかし、TMが四量体であるために、scFvの数(価数)が異なる融合抗体が生成され、均一な融合抗体を得ることは困難であると判断した。よって、血清中に最も多く存在するタンパク質で、血中滞留性に優れたHSAとの融合へと変更した。その結果、scFvの問題点であった「血中滞留性」を大きく改善することに成功したため、目的とする生体内イメージングへの応用が見えてきたと考えている。タンパク質発現に用いる宿主が異なる場合でも、Sortase Aによって各々の機能を低下させることなく融合分子として得られることから、Sortase Aの有用性を示すことができた。以上の理由から、自己評価を(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載の通り、キレート剤であるDOTAとGd3+を結合させた融合抗体を糖尿病モデルマウスに投与して、MRIを用いたイメージングを行う。また、アビジン様タンパク質からHSAへ変更したことに伴い、キレート剤は化学修飾法によりHSAへ結合させる。また、設備・環境次第では、近赤外の波長域に蛍光を発する色素を利用した蛍光バイオイメージングも計画している。
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Research Products
(3 results)