2014 Fiscal Year Annual Research Report
幼児は「誰の」気持ちがわかるのか?:情動推測における人称性認識の発達的変化
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14J03115
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
近藤 龍彰 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 幼児 / 情動理解 / 人称性 / わからない / 友達関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,(1)これまでの研究の論文化,(2)昨年度行った研究の論文執筆,(3)新たな研究課題の発見と実施,(4)博士論文の執筆,の4つの研究成果が得られた。 (1)に関して,申請者の研究実施計画1,2のうちの1に関連する知見を論文化した。具体的には,幼児はいつから「他者の情動はわからない」ことがわかるのかについて検討を行った。その結果,4・5歳から他者の情動は「わからない」と反応し,5・6歳から「なぜわからないのか」について言語的理由づけが行えることが示された。この研究は採用者の研究課題を前進させることに加え,従来の情動理解研究の方法論と知見を再考するきっかけとなる知見を示した。この知見は「発達心理学研究」に掲載された。 (2)に関して,申請者の研究実施計画1,2のうちの2に関連する知見について論文執筆を行った。具体的には,他者に関する情報量を統制し,これまでの研究で用いた実験を行った。その結果,情報の有無にかかわらず「架空の他者」の認識は変わらないことが示され,他者の人称性認識には日常での関わりといった社会的経験が重要であるという結論を導くことが可能となった。この論文は執筆を終え,「発達心理学研究」に投稿,査読中である。 (3)に関して,申請者の研究実施計画に加え,これまでの研究から見えてきた今後の課題を発見し,その課題を解決するためのデータ収集を行った。具体的には,幼児期の友達関係の発達的変化を明らかにするためのデータを,観察法を用いて収集した。その結果,年少児は先生とよく関わり,年中以降に友達とよく関わるようになること,また,年中以降,友達との関わりにおいて性差が見られるようになること,が示された。このデータを一部解析し,「発達心理学会第26回大会」にて発表した。 (4)に関して,申請者の研究実施計画に関する一連の研究をまとめ,博士論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初研究目的の達成度について,「当初の計画以上に進展している」とした理由は,以下の2点による。 第一に,データ収集の面において,当初予定していた実験計画はおおむね実施されたことが挙げられる。当初は(1)他者の情動はわからないことがいつからわかるのか,(2)他者認識に与える情報の影響,の2つのテーマに関して,それぞれ研究1,2として検討する計画であった。現時点でこの研究は実施されており,すでに実験データを収集し終えている。また,当初は予定していなかったものの,研究をまとめる際には必要となる「幼児期の友達関係」について,観察法を用いた追加のデータ収集を行った。 第二に,研究知見の発表について,計画通りに実施されていることが挙げられる。具体的には,上述の(1)のテーマに関して,「心理科学」「発達心理学研究」といった学術雑誌に論文を掲載している。また,(2)のテーマに関して,論文執筆を終了し,「発達心理学研究」に投稿,査読中である。また,追加の観察データについても学会発表を終え,論文執筆作業に取り掛かるところである。 以上をまとめると,計画していたデータ収集を終え,さらに追加のデータ収集を行った,研究知見を順調に発表,論文化している,という点から,「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の研究活動として,以下の4つを予定している。まず,今年度よりの継続の活動として,(1)「他者認識に与える情報の影響」というテーマに関して執筆した投稿中の論文を学術雑誌に掲載されるようにする,(2)「幼児期の友達関係の発達的変化」というテーマに関するデータ解析を行い,論文を執筆・投稿する,の2点が挙げられる。また,次年度よりの新規の活動として,(3)博士論文としてまとめたものを,一般読者にも伝えられるように書籍化する,(4)これまでの研究知見を見直し,今後の課題を発見・解決するためのデータ収集を行う,の2点が挙げられる。
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Research Products
(6 results)