2014 Fiscal Year Annual Research Report
Dlk1-Dio3ゲノムインプリント制御領域の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
14J03234
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
齋藤 剛志 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | インプリント / エピジェネティクス / ゲノム編集技術 / IG-DMR |
Outline of Annual Research Achievements |
・研究の目的 マウス12番/ヒト14番染色体に存在するDlk1-Dio3ゲノムインプリント領域はヒト疾患の14番染色体のUPD (uniparental disomy) の責任領域であり、また、この領域のインプリント状態に異常が生じる事でマウスでは周産期において胎生致死となることから、正常な個体発生に不可欠な領域であることが分かっている。この領域のインプリントを制御するのはIG-DMRと呼ばれるDlk1-Dio3領域内に存在するインタージェニックな約8 kbpの親の由来特異的なメチル化可変領域であることが分かっているが、その機能する際の分子メカニズムはほとんど不明である。本研究では、Dlk1-Dio3領域のインプリント状態を制御するIG-DMRが機能する際の分子メカニズムの解明を目的とする。 ・ゲノム編集技術を用いたIG-DMR機能領域候補欠損マウスの作製と解析 これまでに種間における配列の保存性を基にIG-DMRの制御に重要な機能領域の探索を行い、4ヶ所の機能に重要と考えられる保存配列を同定している。今年度はこれらの候補領域に対し、ゲノム編集技術を用いて欠損マウスを作製し、その解析を行った。この内IG-DMR特異的タンデムリピート配列を含む機能候補領域の内の候補4を父方由来で欠損したマウスでは、ほとんどのマウスが周産期において死亡し、生き延びたマウスも出生後まもなく死亡した。これまで母方アレルの非メチル化状態のIG-DMRが機能に重要であると考えられてきたが、今回の結果より父方アレルの候補4の領域がIG-DMRの機能において重要な役割を持つ事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでにIG-DMRの機能に重要と考えられる4つの機能領域候補について、それぞれゲノム編集技術を用いて欠損マウスを作製した。このうち、機能領域候補の1つの候補4の父方アレルを受け継いだ場合、周産期致死が引き起こされた。この結果より、これまで母方アレル特異的に機能に重要な領域があると考えられていたIG-DMRが父方アレルも機能に重要な役割を持っている事が考えられる。当初の予想とは異なる形ではあるものの、当面の目標であったIG-DMRの機能領域の同定という目的は達成された。しかし、予想より機能領域候補の全ての欠損マウスを揃えるのに時間がかかった事や、候補4を父方欠損で受け継いだ場合に周産期致死を引き起こしてしまうため、候補4について必要なマウスを全て用意し解析に移る所までは出来なかった事から、当初の計画通りの進行は出来なかった。しかし、残りの候補1~3については、予定した雌雄の各候補欠損マウスが作製できている。これらのマウスとJf1を掛けあわせた胎児を用いてDlk1-Dio3領域周辺のインプリント遺伝子の発現状態、メチル化状態の解析を開始し候補1と2については既に一部が完了した。候補4の必要なマウスが揃うまでに、残りの候補についての解析を確立する事で、その後は順調に進行出来るものと思われる。また、当初の計画には存在しなかったが、候補4が機能に重要である事が同定出来た事から、候補4のTgマウスをコスミドベクターを改変する事で作製した。既に複数のラインでTgの系を確立出来たので、今年度はこれらのマウスを用いて候補4がどのようにIG-DMRの機能に寄与しているか解析する。以上より当初の予定通りのタイムスケジュールではないものの、臨機応変に対応する事で研究はおおむね順調に進展していると言えると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、IG-DMR機能領域候補4つについてゲノム編集技術を用いて欠損マウスを作製した。候補1、2については作製したマウスとJf1を掛けあわせた胎児を用いて、Dlk1-Dio3領域のインプリント遺伝子の発現状態とメチル化状態を解析中である。候補3については雌雄の候補3欠損マウスが昨年度に作製出来たので、今年度にJf1と掛け合わせて胎児を取り候補1、2と同様に解析する。候補4については、候補4を欠損した雄が昨年度に一匹だけadultまで成長した後死亡した為、これの凍結精子を採取し、これを用いてJf1の卵子と合わせてIVFを行って胎児を得て他の候補と同様に解析する。ただ、候補4欠損雌マウスが現在作製出来ていない為、雄の凍結精子とBDF1の卵子を用いてIVFを行い作製する予定だが、大多数が周産期致死を起こすことが予想されるので、この方法だけでは候補4雌マウスを得ることは困難である。その為、もう一度ゲノム編集技術を用いて、候補4欠損マウスが取れるまで作製する。IVFとゲノム編集技術の両方を用いる事で候補4雌欠損マウスの作製を目指す。得られた候補4雌欠損マウスに関しては、Jf1と掛け合わせを行い、得られた胎児を用いて他の候補と同様にDlk1-Dio3周辺領域のインプリント遺伝子の発現状態とメチル化状態を解析する。各機能候補について解析が完了後、IG-DMRの機能に重要であると同定出来た領域については、その領域にBiotinを付与したプローブと野生型のマウスの核タンパク質を用いて、機能領域に結合するタンパク質、RNA等を取得し、質量分析で取得した因子を同定する。取得した結合因子をコードする遺伝子のKOマウスをゲノム編集技術を用いて作製し、Dlk1-Dio3領域間のインプリント状態の変化をin vivoで解析する予定である。
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