2015 Fiscal Year Annual Research Report
プログラニュリン欠如に起因する神経変性疾患発症機構に関する研究
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14J03307
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 良法 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | プログラニュリン / リソソーム / 酸性化 / カテプシンD / カテプシンB / 前頭側頭葉変性症 / 神経セロイドリポフスチン症 |
Outline of Annual Research Achievements |
リソソームにおけるプログラニュリン(PGRN)の役割を調べるために、ヒト神経芽細胞腫であるSH-SY5Y細胞にPGRNを過剰発現させた。細胞にPGRNを発現させると、成熟型のカテプシンDの発現量及び酵素活性が減少した。リソソームの酸性化を阻害する薬物であるbafilomycinA1を添加すると、PGRN発現による成熟型カテプシンDの発現減少が抑制された。また、カテプシンBの選択的阻害剤であるCA074Meを添加すると、PGRNの発現はさらに上昇したにも関わらず、成熟型カテプシンDの発現低下が認められなかった。そこで、水素イオン濃度がカテプシンBによる成熟型カテプシンDの分解に与える影響を調べるために、pH4、5または6の細胞溶解液を作成し、CA074Me及びリコンビナントPGRNを添加して37℃で培養した。pH4の細胞溶解液では、CA074Meの添加によって、成熟型カテプシンDの発現量が増加したが、pH5及び6またはリコンビナントPGRNの添加によって成熟型カテプシンDの量は増加しなかった。以上のことから、PGRN発現による成熟型カテプシンDの減少は、リソソームの酸性化によって、カテプシンBの活性が変化した結果であることが示唆された。そこで、PGRNがリソソーム酸性化に与える影響を調べたところ、PGRNの発現によってリソソームのpHが低下することが明らかとなった。さらに、PGRNをリソソームに輸送するソルチリン及びカチオン非依存性のマンノース6リン酸受容体(CI-M6PR)を発現抑制すると、リソソーム内のPGRN発現量は低下し、PGRN発現による成熟型カテプシンDの発現減少も部分的に抑制された。以上のことから、リソソームに輸送されたPGRNは、リソソームの酸性化を促進する働きがあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プログラニュリン(PGRN)は12個のシステインが特徴的に配列した7.5個のグラニュリンモチーフで構成されている分子量約68.5kDaのタンパク質である。現在までに炎症、腫瘍形成、創傷治癒、インスリン抵抗性といった様々な生理機能や病態発現に関与する多機能な因子であることが明らかとなっている。中でも、PGRN遺伝子のハプロ不全によるPGRNの産生低下は認知症の亞型である前頭側頭葉変性症(FTLD)の原因となること、変異型PGRN遺伝子のホモ接合により、リソソーム病である神経セロイドリポフスチン症が発症することから、脳内における役割に注目が集まっている。 これまでに申請者は、老齢時の脳におけるPGRNの主要な産生源が活性化ミクログリアであることに着目し、活性化ミクログリアにおけるPGRNの役割について、PGRN遺伝子欠損(KO)マウスを用いて解析を行ってきた。その結果、PGRNは脳損傷後に活性化したミクログリアのリソソーム機能不全を抑制することで、過剰な炎症反応を抑制していた。さらに、老齢マウスを用いた解析から、PGRNは神経細胞において、老化に伴うリソソームの機能不全を抑制することで、TDP-43の細胞内蓄積を抑制していることが示唆された。そこで、リソソームにおけるPGRNの役割を培養細胞等を用いて調べたところ、リソソームに輸送されたPGRNは、リソソームの酸性化を促進していることが明らかとなった。 総合すると、プログラニュリンはリソソームの酸性化を促進することで、加齢に伴うリソソームの機能不全を抑制し、TDP-43の蓄積などの毒性から細胞を保護していることが考えられた。以上の結果はPGRN欠如に伴う神経変性疾患発症機構の解明に大きく迫るもので、期待通りに研究が進展した成果であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
プログラニュリン(PGRN)によるリソソーム酸性化機構を明らかにするための実験を行う。リソソームの酸性化はV型のATPアーゼに依存しているため、PGRNが直接的にV型ATPアーゼの機能を制御する可能性を考えて、V型ATPアーゼの各サブユニットとPGRNの相互作用について調べる。一方で、タグ付きのPGRNを作成し細胞に発現後、免疫沈降を行ったサンプルを質量分析で解析することで、PGRNによるリソソーム酸性化を仲介する因子の候補を選定する。それらの候補は、発現制御を行うなどして、リソソームの酸性化に与える影響を検討する。さらには、PGRNとの相互作用を共免疫沈降法などで確認する。PGRNによるリソソームの酸性化を仲介する因子Xが同定された後、PGRNによる因子Xの制御機構を明らかにする。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Phosphorylation of TAR DNA-binding Protein of 43 kDa (TDP-43) by Truncated Casein Kinase 1δ Triggers Mislocalization and Accumulation of TDP-43.2016
Author(s)
Nonaka T, Suzuki G, Tanaka Y, Kametani F, Hirai S, Okado H, Miyashita T, Saitoe M, Akiyama H, Masai H, Hasegawa M.
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Journal Title
The Journal of Biological Chemistry
Volume: 291
Pages: 5473-83
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Progranulin mediates neurovascular protection via multiple therapeutic effects in experimental acute ischemic stroke.2015
Author(s)
Kanazawa M, Kawamura K, Takahashi T, Miura M, Tanaka Y, Koyama M, Toriyabe M, Igarashi H, Nakada T, Nishihara M, Nishizawa M, Shimohata T.
Organizer
Brain and Brain PET 2015
Place of Presentation
バンクーバー(カナダ)
Year and Date
2015-06-27 – 2015-06-30
Int'l Joint Research
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