2015 Fiscal Year Annual Research Report
外界の運動を明瞭に知覚するための視覚情報処理の計算メカニズムとその神経基盤
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14J03550
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村井 祐基 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 時間知覚 / 視知覚 / fMRI / 心理物理学 / 文脈効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
注目している刺激の時間特性や空間特性に関する知覚が、時間的に前後、あるいは空間的に周囲にある刺激に影響される効果を文脈効果と呼ぶ。本年度は、時間長の知覚における文脈効果を心理物理実験・fMRI実験によって検討した。 特定の時間長の刺激を繰り返し観察した後では、刺激の時間長が順応刺激と逆側にずれて知覚される(時間長順応)。一方、複数の時間長の刺激を交互に呈示すると、刺激の時間長が事前に呈示した刺激の時間長の平均に近づいて感じられる(中心化効果)。本年度は、刺激の時間スケールや呈示する感覚モダリティを系統的に操作しながら両効果の定量的比較を行った。結果、中心化効果は時間スケールごとに異なる計時メカニズムによって生起していることを示した。一方、時間長順応はミリ秒単位の時間長と秒単位の時間長をまたいで定量的に同程度の効果が広く観察されたことから、時間長非依存の上位システムが時間長順応を引き起こしている可能性が示唆された。 さらに、fMRIを用いて中心化効果を引き起こす脳内機構を研究した。同じ時間長を計時しているときでも、直前にミリ秒単位の刺激が呈示されている場合はミリ秒の処理に関わる運動野が、秒単位の刺激が直前に呈示された場合は秒単位の処理に関わる下頭頂小葉が賦活を増加させることを示し、文脈依存的な脳活動を発見した。 これらの研究は、英語原著論文2報(筆頭著者1報、第二著者1報)として出版された他、Current Opinion in Behavioral Sciences誌に総説を執筆した(筆頭著者)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は、外界の明瞭な知覚を可能とする脳情報処理を明らかにしようとするものであるが、本年度検討した文脈効果は、時間的に前後にある情報を元に現在呈示されている刺激の時空間情報を最適に推定しようとする知覚の精緻化戦略の一つに他ならない。 本年度は、当初計画で次年度に予定していたfMRI研究が終了し1報の英語原著論文として発表した他、心理物理研究では2報の英語原著論文及び1報の英語総説論文を発表するなど、進捗状況は当初計画を大きく超えるものであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、fMRI decodingなど新規手法を用いて時間知覚や運動知覚の神経基盤を検討する予定である他、EEGやTMS、tACSといった様々な計測モダリティとの同時計測を行う。また今年度購入した眼球運動計測装置を用いて、眼球運動時の時間知覚や運動知覚について、心理物理学・脳機能計測の両面から検討を行う予定である。
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Research Products
(9 results)