2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J03661
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 渉 大阪大学, 国際公共政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 侵略犯罪 / 国際刑事裁判所 / ローマ(ICC)規程 / カンパラ検討会議 / 国連安全保障理事会 / 極東国際軍事(東京)裁判 / 国際刑事法 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際刑事裁判所規程(以下、ICC規程)で規定されている「侵略犯罪」で誰が処罰されうるのかを検討するものである。平成26年度は、本研究の出発点として、1945年から1949年まで行われた戦後軍事裁判(国際軍事裁判、極東国際軍事裁判、ニュルンベルク後続裁判)の判決の検証を主に行った。侵略犯罪は、新しい犯罪であり、最も早くても2017年より対象犯罪に含まれることになるため、判例はなく、「平和に対する罪」として、各国への侵略戦争を指揮、指導した者を裁いた戦後軍事裁判を先例として位置づけ、如何なる地位にあった者、如何なる行為を行った者を有罪とし、処罰したかを確認することで、議論の取っ掛かりとしようとしたわけである。 その結果、「政策を形成し、影響を及ぼす要素」を持っていることが一つの基準とされていたことがわかった。判決を見る限りでは、戦後軍事裁判の処罰範囲とICC規程で裁かれると想定される処罰範囲は一致しているのではないかと思料される。一方で、一致すると結論付けるには、戦後軍事裁判で提示された各要素がICC規程の条文においても読み込める必要が生じる。 そこで、次の検討として、戦後軍事裁判の各憲章条文とICC規程条文の比較も行った。主に「人類の平和と安全に対する罪」法典案の議論、1998年ICC規程採択後から立ち上げられた侵略犯罪特別作業部会、及びプリンストン大学で開催されていた非公式会合(通称、プリンストンプロセス)で各国より出された主張、報告書に依って検討を行った。その結果、変わらず、戦後軍事裁判の成果とICC規程「侵略犯罪」の人的処罰範囲は一致するという結論が導き出された。 以上の検討より、戦後軍事裁判で提示された各要素が国際刑事裁判所で「侵略犯罪」を裁く際の人的処罰範囲の重要な指標になることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年の当初の予定では、戦後軍事裁判の検討と国際刑事裁判所(ICC)規程第8条bisの解釈の検討を別々の論文でまとめることとしていた。しかし、検討を進めていく過程で、両者は、単純に分けることは出来ず、裁判の検討をするにおいて、ICC規程をどのように評価するかについても、指摘する必要性が出てきた。そのため、ICC規程第8条bisの解釈についても、一部、戦後軍事裁判判決との検討を射程とする論文で検討することとした。ICC規程8条bisの解釈検討についても、すでに着手しており、近く論文として、まとめたい。よって、本研究は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、必要な検討としては、国際刑事裁判所(ICC)規程第8条bis、同規程第25条3項bisの条文解釈、規程第8条bisと規程第25条の整合性の検討、同規程第30条で規定されている「主観的な要素」と「侵略犯罪」の検討が上げられる。ICC規程第8条bis、同規程第25条bisに関しては、より細かい解釈を試みる。その上で、両者の整合性について、検討する。また、同規程第30条「主観的な要素」に関しては、犯罪構成要件文書などの検討も通じて、詳細に検討をしたい。また、規程第8条bisは、規程第3部の各規定とも整合的である必要があるので、第28条、33条とも整合性を維持できるのかを検討する必要があるかもしれない。
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Research Products
(2 results)