2014 Fiscal Year Annual Research Report
膝前十字靱帯損傷・再建術後の運動制御機構における神経可塑性の解明
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14J03763
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
干場 拓真 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 膝関節 / 動作特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、第一段階として膝前十字靱帯(ACL)再建術後の両側の大腿筋群の活動動態を検証した(実験1)。被験者は術後1年以内のACL再建術者(競技復帰時期の選手)7名と運動習慣のある一般成人10人を対象とし、対象者には高さ30cmの台からの着地動作を行わせた。その際の両側の下肢関節運動及び大腿筋群の筋活動を3次元動作解析装置及び筋電位計を用いて計測した。解析項目は下肢関節角度(股関節:屈曲・伸展、膝関節:屈曲・伸展、足関節:底屈・背屈)及び大腿筋群(大腿伸展筋:大腿直筋、大腿屈筋:大腿二頭筋、半腱様筋)とし、それらの項目からACL再建術が動作遂行様式に与える影響を評価した。結果、下肢関節角度には術側・非術側差は認められなかったが、術側の大腿筋群の活動量が非術側に比べ大きくなる傾向が得られた。これより、競技復帰時期の選手において両側の対称的な下肢関節運動は再獲得するが、動作中は術側の大腿屈筋群の活動を高めることによって膝関節を安定させている可能性が示唆された。 ACL再建術が術側の大腿屈筋群の活動動態に影響を与えることが示された本研究結果はEuropean college of sport scienceにおいて、報告した(題目: Muscle activity in the anterior cruciate ligament during a drop-landing maneuver of subjects who had undergone reconstructive surgery)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、第一段階として随意運動の遂行に伴う下肢関節運動及び大腿筋群の活動動態、第二段階として生理学的観点から大腿筋群の収縮様式を探り、ACL再建術後の動作特性を詳細に検証することを目的としている。そして、ACL再建術者の運動制御特性に新たな知見を提供し、ACL再建術者の運動制御機構の解明と臨床応用への可能性を検証する。 平成26年度ではACL再建術後の競技復帰時期の選手において、健常者とは異なる特有の動作特性が存在することが明らかになった。これまで、ACL再建術後の大きな問題として、低い競技復帰率(パフォーマンスの低下が原因である可能性)と術側のみならず非術側への二次傷害の発生が挙げられている。しかし、ACL再建術者に関する報告では術後数年の選手を対象とし、術側脚における下肢関節運動(特に膝関節)のみの報告が主であるため、ACL再建術者に特化したリハビリテーション及び二次傷害予防法の確立がされていないのが現状である。 以上より、競技復帰時期のACL再建術者の動作特性に新たな知見を付与し臨床応用への可能性が示された平成26年度の実験結果は、本研究の第一段階の目標を達成するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
ACL再建術後の大腿筋群の活動の変化にはACL再建術による神経系機能の変化が深く関わっていることが推祭されるため、大腿筋群の収縮様式について詳細に検証する必要がある。そこで、第二段階として大腿筋群の巧緻性コントロール(外部刺激に対する反応や最大出力の持続等)に及ぼす影響を明らかにする(実験2)。運動課題としてはランダムに設定されたタイミングのもとできる限り早く全力で収縮させる課題(4秒間の等尺性収縮)を課し、その時の反応時間及び最大トルク値と各々の大腿筋群の活動から筋機能を評価する。実験1と同様に、被験者は術後1年以内のACL再建術者(競技復帰時期の選手)10名と運動習慣のある一般成人10人を対象にする(現在までに一般成人5人の測定が終了)。これより、健常者においてみられる運動制御特徴を基盤としたACL再建術者の運動制御特性を把握するが可能となり、ACL再建術が術側の大腿筋群の収縮様式に与える影響度からACL再建術者が抱える動作特性の反映を目指す。そして、得られた知見より、将来的な臨床への応用(ACL再建術者に対するリハビリテーション法及び二次傷害予防法の確立)の可能性を探る。
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Research Products
(1 results)