2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J03833
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大木 一慶 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | R&D / 経済成長 / IPR / 技術移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は企業の研究活動と生産性成長に関する理論的分析を行うという観点のもと、途上国における知的所有権(IPR)保護強化が、先進国企業によるイノベーション・先進国から途上国への技術移転・先進国途上国間の賃金格差に与える影響を分析する研究を行った。 本研究で構築したモデルは、技術移転経路が直接投資(FDI)を通じて実施されるプロダクトサイクルに分類される。当分類における先行研究では途上国におけるIPR保護強化によって、先進国企業のイノベーションが促進され・先進国から途上国への技術移転が増加し・先進国途上国間の賃金格差が縮小するという結果となっている。 本研究では先進国から途上国へ技術移転を実施するためには先進国・途上国両方の資源(生産拠点の設立、技術の指導・学習、途上国労働者の管理・監督、途上国の習慣・法制度の調査等)が必要という先行研究で無視されてきた事実に注目することによって、『IPR保護強化が先進国のイノベーションを低下させる可能性がある』といった既存研究で指摘されてない結果を示した。また本研究で展開した基本構造を踏襲したまま、途上国企業が技術を漏洩してしまうリスクを考慮する応用モデルを構築することによって、『途上国の法整備が未熟な場合は、IPR保護強化によってその国へ技術移転を行った先進国のイノベーションを低下させる可能性がある』ことを示した。 またプロダクトサイクルモデルは設定によっては均衡における安定性が満たされない場合があり、そのような状況で比較静学を行うことで経済学的に意味のない結果を導出する可能性は排除しなければならない。そこで本研究では均衡の安定性の確認を行い、内点均衡においては常に安定性が満たされることを示した。(パラメータによっては端点均衡の可能性があるため、その場合は内点のケースとは厳密に区別して分析する必要がある。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採択後に開始した研究を“International intellectual property rights protection and economic growth with costly transfer”として論文にまとめ、2014年度秋開催の日本経済学会・若手経済学者のためのマクロ経済学コンファレンスで報告するという形で区切りをつけることができた。採択期間2年の1年目ということを考慮すれば、当初の計画以上のペースで進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に取り組んだ研究を更に発展させる形で新たな研究を開始する。本年度と同様に、論文にまとめ、学会で報告するという形で、研究をアウトプットできる水準まで進展させることを目標とする。
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