2014 Fiscal Year Annual Research Report
中国思想における古典解釈の体系性について-解釈者と古典の双方向性を中心として-
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14J04143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福谷 彬 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 朱子 / 道学 / 古典解釈 / 陳亮 / 孟子 / 四書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国古典解釈史、特に宋代の道学派の四書解釈における古典と解釈者の相互関係性の解明を目的とする。 本年は、朱子とその論敵である陳亮の『孟子』理解の構造性の違いについて研究し、両者がともに『孟子』に矛盾的な傾向を見出す点で一致しつつも、この矛盾を一貫したものとして説明しようとする過程で正反対の手法を取り、その結果として相反する思想を持つに至ったことを論じた。 従来、陳亮は、「道学者」朱子に反対した「事功派」の学者として批判的に考察されることが多く、その経書理解については特に考察されることはなかった。本研究では、陳亮の立場に立ってその孟子理解の構造性を考察し、朱子の立場からは容認し難い孟子の原文を、陳亮はむしろ自己の思想の根拠に据えて理解しようとしていることを論じた。 特に英雄尊崇や欲望肯定論といった陳亮の特徴的な思想が『孟子』を根拠として説かれていることに着目して、これらの『孟子』の原文に対する朱子との見解との相違の考察を通じて、両者の思想傾向の違いは『孟子』理解の構造性の違いとして見ることができることを論じた。 これらの作業を通して、四書という同じ古典を尊び、また性情論などの問題意識を共有しつつも、鋭く思想的に対立する学派を内包する「道学」という思想空間の実相の一端が明らかになったことと思う。この点については、今後予定している陸九淵や張南軒といったそのほかの道学派内部の有力な思想家の四書理解の構造性についての考察と合わせることで、改めて考えたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南宋道学における有力な一派の領袖である陳亮の經書理解について、孟子理解の構造性の観点から一定の性格付けを行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
陸九淵や張南軒といったそのほかの道学の有力な派閥の四書理解の構造性について考察し、共通した古典を尊び、問題意識も共有しつつも、異なる思想体系を共伴させた、思想空間としての「道学」の実相を解明したい。
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Research Products
(2 results)