2014 Fiscal Year Annual Research Report
漢から魏晋にかけての皇太后臨朝称制と王朝権力構造の変遷
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14J04166
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平松 明日香 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 皇太后 / 臨朝称制 / 外戚 / 宦官 / 尚書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は発表を2回行い、前者の発表はすでに論文としてほぼ脱稿している。 本研究員は2014年12月に立命館史学会大会において「後漢安帝期における宮廷勢力の変容と順帝擁立クーデタ」を発表した。本発表では、後漢の変革期にあたる安帝親政期とその前後の時代である鄧太后臨朝称制期、閻太后臨朝称制期を軸に外戚・宦官・士人官僚(主に尚書官僚)各々の要素から検討を加えた。その結果、安帝やその外戚である耿氏・閻氏はいずれも宦官を必要とする状況にあり、宦官の擡頭が本格化したのは安帝親政期であることを指摘した。加えて閻太后臨朝称制期に至っても尚書は反外戚の傾向が強く、閻氏は尚書をはじめとする士人官僚と容易に提携できなかったため、宦官との提携が継続したことを解明した。後漢中期における政権中枢部の変革を明確にすることにより、その後の皇帝、皇太后、外戚による宦官や尚書利用の変化に関しても新たな視座を示すことができた。特に本発表で行った尚書に関する検討は、本研究員が予定している曹魏以降の政権中枢部の研究においても有益である。 また、2015年3月には六朝史研究会において「前漢代における皇太后政治介入の変遷と外戚輔政」を発表した。これは、当初予定していた「元后期の臨朝称制の考察」を発展させ、前漢一代における皇太后による政治介入の変化を検討したものである。今回の発表では、武帝期以前の皇太后は、自身の要求を政治に反映するにあたり外戚を仲介させた事例はほとんど見られないのに対し、昭帝期以降は外戚、朝臣を仲介する政治介入が増加することを解明した。さらに、外戚による政治輔佐の常態化が臨朝称制にも影響を与えたことについて、前漢末の元后による臨朝称制の検討から明らかにした。この研究は、後漢臨朝称制をより深く検討するうえでも有益である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度で当初予定していた「元后期の臨朝称制の考察」に関しては、前漢成帝期、哀帝期、平帝期(元后による臨朝称制期)を中心に『漢書』『漢紀』などの史料から、元后が行使し得た権限、朝議活用の有無、士人官僚との接触の有無などを検討した。しかし、より広く前漢一代を通じた皇太后による政治介入とその政治的背景を確認する必要性にせまられたため、皇太后の政治介入法に関して、外戚利用の有無を中心に検討を加えた。この成果を2015年3月に「前漢代における皇太后政治介入の変遷と外戚輔政」として六朝史研究会にて発表した。当初の予定であった論文発表には至らなかったものの、前漢代における皇太后の政治介入とその背景に関しては予定以上に広範に深く論じることができた。この成果は2015年度中に論文として学術雑誌に投稿する予定である。 また、2014年12月には立命館史学会大会において「後漢安帝期における宮廷勢力の変容と順帝擁立クーデタ」を発表した。これにより、安帝期が後漢政治史において重要な転換期であることを明確にすることができた。結果的に、全体的な研究テーマである「漢から魏晋にかけての皇太后臨朝称制と王朝権力中枢部の変遷」に重要な視座を与えることに成功したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度中にはまず、ほぼ脱稿している「後漢安帝期における宮廷勢力の変容と順帝擁立クーデタ」を修正し、学術雑誌に投稿する予定である。 次いで、2015年3月六朝史研究会において発表した「前漢代における皇太后政治介入の変遷と外戚輔政」に関し、発表をもとに論文を執筆し、投稿する予定である。 また、「後漢安帝期における宮廷勢力の変容と順帝擁立クーデタ」の補足として、録尚書事と尚書令、および外戚の尚書利用に関する論稿を研究ノートの形で投稿する予定である。 以上の3本の論文(研究ノート)執筆および投稿は現在のところ今年度の9月までに行うことを予定している。それ以降は、曹魏における皇太后臨朝称制と輔弼の臣に関する研究と成果発表に努めたい。また、「中国古代中世における母権の変遷」に関しては、すでに少しずつ史料を集めつつある。これについても発表が行えるよう尽力する。
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Research Products
(2 results)