2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04175
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 嗣太 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 都市 / 建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、急速な都市化の結果としての生活環境の変化を、特に建造環境との関係から明らかにすることにある。今年度は長期的に調査地に滞在することにより、主に二つの調査を行った。一つ目は、現在ジャカルタにおいて大きな社会問題となっている、一般的にインフォーマル居住区と定義されるカンポンと呼ばれる高密度居住区の強制撤去と、その住民の公共集合住宅への移住についての調査である。住民へのインタビューによって両建造環境の差異を明らかにし、住宅が住民たちによっていかに意味づけられているかを明らかにした。そこから、居住環境がカンポン住民のアイデンティティ形成に対して与える影響についての議論を行った。 二つ目は、このような低所得者層の住宅問題を歴史的に位置づけるべく、スハルト政権期に行われた、大規模テーマパーク建設に伴うカンポン住民の強制撤去について調査した。開発時の公式資料や新聞と、その状況を知る住民へのインタビューにおける言説を比較することで、当時の政治言説空間において、住民の住環境への配慮が存在していないことを明らかにした。特にこの開発計画に対しては学生団体による反対運動が盛んに行われたが、そこでの主な議論の内容は、大きな予算を消費するテーマパーク開発によって国家開発が遅延することに対する批判であり、現地住民の生活への影響に対する関心は確認することができない。一方この開発は、テーマパークの従業員をはじめとした外部からの大規模な人口流入を招いた。それにより、土着民と新規流入者という対比の下で住民のアイデンティティが再構築された。このように国内政治と都市開発、そして居住民のアイデンティティという関連性に注目することで、都市化による生活環境へのインパクトを明らかにしてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度において行った都市化の現状の調査結果を踏まえて、今年度は低所得者層向けの住宅開発に関する調査を行い、これを歴史的に位置づけることができた。ケーススタディの詳細な分析によって研究プロジェクトの中核となる部分が構成できつつある。これに加えて、現地の研究者や研究機関との連携をより強化し、研究内容を深めるための議論を続けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において行ったケーススタディを、歴史的な前後関係を踏まえて分析するために、比較対象となるケーススタディを行う。具体的には、中央政権の交代の前後において、いかに都市政策が変わったか、またこれらの都市政策がいかに国政のためのツールとして用いられていたかを明らかにする。そのために、ナショナルアーカイブや国立図書館を利用し、当時の行政資料や新聞記事を収集する一方で、当時の都市開発の状況を知る住民へのインタビューを行う。両者を組み合わせることで、低所得者層向け住宅開発の変遷をより多角的に描写することを目指す。
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Research Products
(1 results)
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[Presentation] The Transition of Suburban Kampung in Jabodetabek2016
Author(s)
Tsuguta Yamashita, Kengo Hayashi
Organizer
The 13th International Asian Urbanization Conference: Rapid Urbanization and Sustainable Development in Asia
Place of Presentation
Universitas Gadjah Mada, Indonesia
Year and Date
2016-01-07 – 2016-01-08
Int'l Joint Research