2015 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアにおけるイスラームと多元的法制度-スマトラ島ミナンカバウ社会の民族誌
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14J04551
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西川 慧 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | インドネシア / 西スマトラ / 世帯経済 / 土地紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から引き続き、インドネシア西スマトラ州パシシル・スラタン県S村を対象に参与観察を行った。まず、1つの母系クランに属する全世帯を対象として親族関係と土地利用に関するインタビューを行い、母系クランが村に定着する歴史的な過程に関するデータを得た。 世帯経済に関してもインタビューを行った。すると、従来の研究で指摘されてきたよりも水田稲作への依存度が低いことが明らかになった。換金作物ガンビル(染料として使われる植物で、主にインドに輸出される)栽培を主たる生業としている世帯がほとんどであった。母系クランの共有地における換金作物栽培は稀であり、クランに婚入してきた男性が山地を開墾しガンビル畑にしているケースが多かった。世帯経済は母系クランの共有地よりも獲得財に大きく依存していると考えられる。 上記の調査に並行して、S村内で起こった2つの土地紛争の調査・記録を行った。いずれの土地紛争も村裁判に持ち込まれたものの、調停には至っていない。来年度もこの紛争に注目する予定である。 パシシル・スラタン県の市民法廷およびイスラーム法廷における基礎調査を行った。来年度は法廷での調査を中心に行う予定である。そこで今年度は、来年度の調査にむけた信頼関係づくりに力点をおいた。その結果、市民法廷の判事と良好な関係を築き、2件の判例を収集することができた。また、イスラーム法廷近くで訴訟手続きの手伝いをする「イスラーム法コンサルタント」と知り合い、インタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
西スマトラ州ミナンカバウの農村社会の生活世界に関するデータを十分に集めることができた点、イスラーム法廷および市民法廷での調査を開始した点では、予定通りである。 しかし、予定していた調査村落における村裁判に関するデータを十分に集めることができなかった。調査当初、村裁判の役員たちが部外者の参加を渋ったためである。調査村落における滞在を通して、役員たちの信頼を得たため、今では役員たちの方から村裁判へ参加を促されるようになった。やや遅れてはいるが、当初の予定どおり研究課題を遂行することは可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、イスラーム法廷および市民法廷での調査を行う予定である。これまで調査に重点を置き、本研究課題に関する発表や論文執筆をしてこなかったので、今後は積極的に研究発表をしていく。
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