2014 Fiscal Year Annual Research Report
IRSF1.4m望遠鏡の最新データを用いたLSP現象の変光原因の解明
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14J05091
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高山 正輝 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 恒星物理学 / 赤色巨星 / 変光星 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究でlong secondary period(LSP)のサイクルに伴って赤色巨星の「色」が周期的に変動していることを可視、近赤外の観測データの解析から明らかにすることができた。その様子は、星が暗くなるに従って色は「赤く」なる、という脈動変光星に見られる性質に似ていた。しかしM型星と呼ばれる星の表面で酸素の含有量の多い星に限って、近赤外波長域のJ-K colorでこれとは逆の振る舞い、すなわち暗くなるに従って「青く」なることを初めて発見した。これは本研究の根幹であるIRSFのデータを使ったことで可能になった発見と言える。このようなLSP現象で見られた天体の「色」の変動を説明するため、二つのモデルを考えた。一つは星周ダストの周期的な生成による減光によって説明を試みるモデル、もう一つは星表面の巨大な黒点によってLSP星の減光と色の変動の説明を試みるモデルである。星周ダストについては先行研究でその存在が示唆されていた。しかし理論的な計算からダストによる減光ではLSP現象を十分に説明出来なかった。LSP星には前述のM型星の他に、炭素の含有量が多い炭素星が見つかっている。巨大黒点のモデルはこの炭素星の変光をうまく説明できた。しかしM型星についてはこのモデルで説明が出来なかった。そのためLSP現象は上の2つとは異なる別の物理現象によるものかもしれない。以上の結果は査読論文(Takayama et al., 2015, MNRAS, 448, 464-483)として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の着眼点の一つであるIRSF/SIRIUS cameraで得られた新しい観測データの解析が進みつつある。解析の終わったデータをOGLEのデータと組み合わせることでLSP星の「色」の変化を調べるという研究の重要な目的に迫りつつある。IRSFのデータはLSP星についてこれまで知られていなかった多くの観測的事実を与えてくれた。また、これらの観測結果と比較するため2つの理論的なモデルを検証した。今回試した2つのモデルはLSPを説明するためには矛盾があることがわかり、LSP現象を説明する仮説の第一候補からはずすことに貢献した。これらの結果は学術論文として今年度出版することができた。これらはおおむね研究計画の通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きLSP現象に伴う天体の「色」の変化に着目して研究を進める予定である。一方で、これまでの研究で明らかになった事実からIRSFやOGLE以外の別の観測データを組み合わせることで、色の変動の原因に迫れるかもしれない。そのような観測データが存在しないか探って行く。また当初の計画にある通り、LSPを説明するための理論モデル、仮説の提唱・検討に励む。一年目の研究結果として「星周ダストによる減光」「黒点による減光」はLSPの変光を説明するには適当ではないことがわかって来た。現在は斉尾英行氏、ピーター・ウッド氏、板由房氏とともに、星の脈動の理論に則ってLSPの変光周期と同じくらい長い周期の脈動周期を実現する脈動モードが存在するか否かを検証することを計画中である。
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