2014 Fiscal Year Annual Research Report
核酸医薬内包高分子ミセルを用いた放射線増感剤の開発
Project/Area Number |
14J06502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 和恵 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 癌治療 / 放射線 / ドラッグデリバリー / 核酸医薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、核酸医薬を癌細胞に予め送達し、放射線感受性を高めることで、治療効果を増強し副作用を低減することである。具体的には、放射線照射により生じるDNA損傷を修復するタンパクを標的とした核酸を用いて、放射線増感効果を得ることを想定している。キャリアには両親媒性のポリマーから成る高分子ミセルを使用し、より安定的に核酸を標的に送り届ける。平成26年度は、下記の3つの細胞実験と、動物実験による予備実験を行った。 1.ミセルの有効性の確認:H460-luc細胞をディッシュに播種し、24時間後にLuciferinとGL3もしくはscramble配列siRNAを内包したミセル(500nM)との混合培地と置換し、発光強度を3日間測定した。その結果、GL3を内包した場合に30%の発光強度の減少が確認された。 2.配列の有効性の確認:H460-luc細胞を6 well plateに播種し、24時間後に標的配列およびscramble配列のsiRNAミセルを培地と混合し(1000nM)48時間後のmRNA発現量をRT-PCRにより測定した。内標としてActinを使用し、またポジティブコントロールとしてLipofectamine(50nM)を使用した。ミセルでは40%、Lipoectamineでは90%の発現抑制が見られた。一方、scramble配列での大きな減少は見られなかった。 3.放射線との併用効果の確認:H460-luc細胞を6well plateに播種し、24時間後に標的配列、scramble配列siRNA内包ミセルを培地と混合した(1000nM)。48時間後にX線3, 6Gyを照射した。直後に細胞をディッシュに播種して2週間静置し、コロニーを生成させた。コロニーを固定・染色し、目視により計数した。標的配列siRNAミセルの添加により、6Gyでは10倍の放射線増感効果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、核酸医薬とドラッグデリバリー技術を用いて、臨床応用可能な放射線増感剤を開発することである。研究のステップとしては、1.適した標的タンパク、核酸およびキャリアの選定、2.細胞実験による効果の検証と1へのフィードバック、3.動物実験による効果の検証、を想定している。平成26年度は、複数のターゲットタンパクに対して、2種類のキャリアを用いた評価を行った。細胞レベルでは、特にDNA-PKをターゲットとした場合に高い増感効果が得られており、ステップの1と2を達成したと言える。ステップ3の動物を用いた評価にも着手しているが、まだmRNAレベルの低減は確認できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAPKcsをターゲットタンパクとしたsiRNAをPICミセルに内包させた核酸医薬内包ミセルは、当初予定通りヒト癌細胞株を用いたin vitro試験で良好な結果を示した。しかしながら、動物実験では期待されていたほどの放射線増感効果が得られていない為、再度ターゲットタンパクの選定と評価方法の検討が必要であると考えている。本研究員が所属する研究室はドラッグデリバリーを専門に扱う研究室である為、放射線生物を専門とするDepartment of Radiation Oncology, Stanford Universityを訪れ、専門家との意見交換を通じて適したターゲットタンパクを選定する予定である。当該研究室では、放射線増感剤および防護剤の臨床試験を始めており、臨床応用を目指す上でも、大変参考になると思われる。
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Research Products
(1 results)