2014 Fiscal Year Annual Research Report
現代ミドルクラス移民に関する社会学的研究:アジアで就労する日本人の事例
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14J06723
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松谷 実のり 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 国際移動 / 若者 / 労働 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は現地採用移住という比較的新しい移住現象を理論的にまとめることを目指し、文献調査や調査データの分析に主眼を置きつつ、学会等での口頭報告や論文を提出すると同時に、2016年の国際社会学会でセッションを開催する準備を開始した。 研究活動の具体的な内容としては、関連文献の読み込みに努めるとともに、調査データの分析、再分析を行った。また、現地採用移住者をミドルクラス移民の一つとして位置づけ、欧米の移民研究の潮流に引き寄せて解釈することを目指した。既存の移民研究は、いわゆる出稼ぎ移民に代表されるロウアー層と、上層のグローバルエリートとに対象が二極化していた。ただし近年、中間領域でミドルクラス移民と呼ばれるグループが増加し、既にEU 内を移動する人々を対象とした研究が進んでいる(Favell 2008他)。EU を中心に研究が進みつつあるミドルクラス移民と比較し、アジアのミドルクラス移民の一例として日本の現地採用移住者を提示するべく、分析枠組の精緻化に努めた。 研究内容の報告に関して、本年度は国内外の学会や所属する研究会での報告を活発に行い、そこで得た意見やアドバイスを元に論文を発表した。また、7月に開催された国際社会学会では、類似研究を行っている国内外の研究者と交流し、有益な情報交換ができた。これらの経験から、ミドルクラス移民に関わる研究者を集め、国際的な比較を行うためのプラットフォームを作る必要性を感じた。その第一歩として、同志社大学のミロシュ・デブナール助教とともに、次回の国際社会学会でセッションを開催する準備を進めている。 その他、アウトリーチ活動の一環として、ゲスト講義の提供や大学のジョイントワークショップの運営等にも携わった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、現地採用移住を移民研究のより広い理論的潮流の中に置き直し、ミドルクラス移民の一事例として研究視覚を拡張することを目指している。本年度は、現地採用移住者をミドルクラス移民として捉えるための枠組の精緻化に努め、学会での口頭報告や論文での発表という形でまとめることができたことから、一定の成果があったと考えられる。次回の国際社会学会で開催予定のセッションは、ミドルクラス移民の研究を他国の研究者との交流の中で深めていくためのものと位置づけており、知見を広く共有し、国際的な共同体制の下で研究を進めていく今後の方向性を示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査を実施し、データを収集する。調査は、研究計画で示した枠組に沿った対象者を捕捉しながら実施する予定である。 また、今年度は特に、収集したデータの分析を進めることで、大枠として洗練させてきた分析枠組を、具体的な事例の解釈のレベルに落とす作業に集中する。この作業は、研究会等での報告や論文の投稿を通じて行われることになるだろう。
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Research Products
(5 results)