2015 Fiscal Year Annual Research Report
現代ミドルクラス移民に関する社会学的研究:アジアで就労する日本人の事例
Project/Area Number |
14J06723
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松谷 実のり 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 国際移動 / 若者 / 労働 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 本研究の目的は二つに大別される。一点目は現地採用と呼ばれる形で海外就労する日本の若者を対象とし、彼らの生存戦略について、特に移動の経路(帰国・定住・再移住)とキャリア構築(再就職や起業等)の関わりという観点から明らかにすること。二点目は、現地採用をアジアにおけるミドルクラス移民の一形態として理論化することである。本年度は海外調査を通じて、一点目の現地採用者のキャリア構築についてのデータを収集することを目指した。また、これまで得られた知見の報告や論文投稿等も並行して進めた。 【研究方法】 現地採用者のキャリア構築について具体的な事例を収集するため、二つの海外調査を実施した。その内容は二つに分かれる。一つ目は、現地採用経験者へのインタビューから、上海での現地採用を終了した後のキャリア形成について明らかにすること。二つ目は、和僑会と呼ばれる海外在住の起業家組織(現地採用者の会員を含む)のネットワーキングの様相を調べ、現地採用者が起業という次のキャリアステップへ至る経路を明らかにすることである。和僑会の年次総会(ホーチミン)と中国大会(深セン)に出席し、その活動やネットワーキングの様子等を観察すると同時に、現地採用経験者へのインタビューと人材紹介会社への聞き取りを実施した。 【研究成果】 調査から、現地採用者のキャリアパスの一つとされる「本社採用」の問題点、起業家との接触により起業や副業の開始が促進されること等が明らかになった。得られたデータは、これまでに収集した事例と合わせて、2016年度に口頭報告と論文投稿という形でまとめる準備を進めた。 また、本年度の業績としては査読付論文が一本掲載され、研究集会にて口頭報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特に研究計画の一点目(現地採用者の生存戦略を、特にキャリア構築の観点から明らかにすること)に対応し、海外調査によるデータ収集に努めた。ベトナムのホーチミン、中国の深センにおいて現地採用経験者に対するインタビュー調査と和僑会の活動の観察を実施し、それぞれにおいて現地採用者のキャリア構築に関わる事例を収集することができた。 調査と並行して、これまで得られた知見の口頭報告や論文の投稿も進めた。研究会での報告、論文の投稿掲載という点でもおおよそ予想通りの進捗を見た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画の一点目に対応したデータ収集を継続して行うと同時に、二点目に対応した理論化についても進める。本研究は、現地採用をミドルクラス移民の一形態として理論化した上で、アジア内の人の移動に関する理論枠組を再構築することを目指している。従来の移民研究は、受入社会の下層に入る労働移民(出稼ぎ者)を対象として進展してきた。1980年代以降、移住先で特権的な位置を占める高熟練移民(グローバルエリート)へと対象が拡大する。しかし近年、移住の大衆化を受けて幅広いミドルクラス出身者が移住経験を有し始めたことを受け、ミドルクラス移民という枠組に基づく事例研究がEUを中心に蓄積されてきている。これまでに収集してきたデータや次年度収集するデータを体系化し、EUを中心として進展してきたミドルクラス移民研究を、現地採用者を事例としてアジアの文脈において再解釈する。
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Research Products
(3 results)