2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物生体情報を利用した根域温度制御栽培によるブルーベリーの高付加価値化
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14J07179
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
菊地 麗 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 植物生体情報 / 連続計測 / 茎径変化 / 栽培ポット内温度分布 / 栽培ポットの水収支 / 果樹の高密度・集約栽培 / ブルーベリー / 果樹のポット栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物生体情報に基づいた根域温度制御を行うことで、収穫時期の調整や果実の品質向上を実現し、高付加価値ブルーベリーの生産に寄与することを目的としている。本年度は下記のような研究を実施した。 ブルーベリーの茎径の変化を連続的かつ精密に測定する装置を試作し、樹体の吸水-蒸散という生理反応と茎径変化との関係性を実験的に検討した。その結果、茎径変化はブルーベリーの吸水と光合成に関わる蒸発散の生理反応と密接な関係があり、その状態を表す指標として利用できることを明らかにした。 また、ポット栽培するブルーベリーの根域温度を人為的に制御する手法としてコイル式の冷却装置を作製して検討した。冷却時におけるポット内土壌の温度分布ならびに経時変化を調べ、冷却装置の性能とポット根域の冷却特性を明らかにした。 加えて、ポット栽培のブルーベリーの水収支を精密に観測し、光合成や蒸発散などの植物生理や茎径変化の関係を検討した。マリオット管を用いた定量灌水装置と栽培ポットの計量システムを構成した。ブルーレイ品種を栽培した直径15cm、深さ12cmのポットの水収支を明らかにした。ブルーベリーの蒸発散はLED照明の照射と連動して変化するが、照射開始から約6時間後に蒸発散が低下し始めると、それに応じて茎径が増加していく様子を詳細に示した。 これらの成果は、第73回農業食料工学会年次大会およびAgEng2014(ヨーロッパ農業工学会年次大会)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブルーベリーの高密度・集約栽培を可能とするポット栽培に着目し、ポット内の根域温度制御が樹体の生理作用、成長、結実に及ぼす影響を明らかにするため、次の3点について検討を進めた。 1.ブルーベリーの生体情報を連続的にモニタリングするため、歪みゲージ式微小変位計を主軸枝に取り付けて連続的に観測する手法を開発した。この微小変位計により、茎径のミクロンオーダーの日周期変動が観測可能となった。モニタリングした茎径の日周期と栽培環境との関係性を検討し、一定の範囲内で強い相関が認められることを明らかにした。 2.栽培ポットの根域温度を制御することで、果実収穫期の遅延や延長を実現し、ブルーベリー果実の付加価値を高めることを検討した。まず、ブルーベリーを栽培した直径24cmの不織布ポットに埋め込んだ熱電対を用いて、連続的な多点計測を実施した。さらに、熱交換用コイルによってポット全体を冷却する根域冷却装置を作成し、根域の冷却実験を実施し、その性能について評価した。実測した土壌温度から推定した熱拡散率を用いて、土壌温度分布をシミュレーションし、実測結果と比較した。 3.ポット栽培のブルーベリーの水収支を精密に観測し、光合成や蒸発散などと茎径変化の関係を検討した。マリオット管を用いた定量灌水装置と栽培ポットの連続的な計量システムを構成した。一定量灌水された水は、一部がブルーベリーによって吸水され、一部はポット下に浸透して排水される。これらをポットの計量結果から蒸散量と浸透量として算出し、ポット栽培したブルーベリーの水収支を明らかにした。蒸発散はLED照明の照射と連動して変化するが、照射開始から約6時間後に蒸発散が低下し始めると、それに応じて茎径が増加していく様子を詳細に示した。 これらの成果については、国内学会および国際会議にてポスター・口頭発表した。また、一部の研究成果を投稿論文として準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、ハウスや植物工場だけでなく露地栽培での利用も考慮して、ブルーベリーの根域温度制御による収穫時期の調整や果実の品質向上を検討する。また、茎径変化をストレスの指標として用いることで、過度なストレス付与を回避し、より低い投入エネルギーでのブルーベリー果実の付加価値化を試みる。 まず、収穫期のブルーベリーを対象にして、ポット根域を冷却することにより収穫時期の遅延や収穫期間の延長、果実の成分変化について検討を進める予定である。
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