2014 Fiscal Year Annual Research Report
発現限定遺伝子が司る細菌の新しい種存続システムの解明
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14J07722
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹村 彩 筑波大学, グローバル教育院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 集団の不均一性 / 発現限定遺伝子 / 種の存続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞集団の不均一性に基づいた新たな細菌特性を見出すことであり、一部の集団に限定的に発現する遺伝子(発現限定遺伝子)を同定し、その機能を探ることで目的を達成しようとしている。 我々は、発現が確認されていない遺伝子には細胞集団の一部で発現する遺伝子が含まれる可能性があると考え、発現未確認の遺伝子リストに含まれ、かつ外来ではない遺伝子37個について、GFPレポーターによる発現解析を行った。結果、計20個の遺伝子がそれぞれ異なる頻度で一部の細胞限定的に発現することを確認した。今後は、強制発現株と欠損株を用いた機能探索を行う計画である。今後の分子機能解析において組み換え蛋白質の作成が必要となることや、強制発現ベクターを改変する必要が生じることを想定して、Gatewayシステムを利用した効率的なプラスミド・株の構築を計画した。Gatewayシステムは、エントリーベクターと呼ばれる中間ベクターを作成しておくことで、その後の目的に応じた各種の発現ベクター(ディスティネーションベクターと呼ぶ)に効率的に目的遺伝子を組み込むことが出来るシステムである。黄色ブドウ球菌で使用するための強制発現用ディスティネーションベクターを2種作成し、これらのディスティネーションベクターを用いた各発現限定遺伝子の強制発現株の作成を進めている。 本研究によって、多数の遺伝子の発現限定性が明らかとなった。その機能解析によって、新しい環境適応機構の存在を具体的に示す研究になることが期待される。集団の不均一性に基づく生存戦略は、黄色ブドウ球菌のみならず他の一般細菌においても存在しており、本研究を通して生命がいかに環境に順応して種を守ってきたかについてのさらなる理解へ貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した各発現限定遺伝子の同定は外来遺伝子を除いて全て完了し、予想以上の数の遺伝子がサブポピュレーションで発現しているという事実を明らかにした。また、新たに構築した黄色ブドウ球菌用の発現ベクター系が期待通りに機能することも確認しており、今後の各遺伝子の機能解析をすすめるための準備段階は完了した。おおむね順調に進展していると評価出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、同定した発現限定遺伝子の機能探索を行う計画である。具体的には、各遺伝子の強制発現株と欠損株を用いて、1)既知の確率的現象、2)その他現象への関与を明らかにする(当初の計画通り)。1)既知の確率的現象には、L型菌と呼ばれる細胞壁を持たないバリアントの生成、パーシスタントという成長スピードが遅いため抗生物質に耐性を示す状態への移行、ゲノムに溶原化しているファージが一定頻度で抜け落ち病原性を発揮する現象などが知られており、これら現象に発現限定遺伝子が関与するかを調べる。2)また、同定した遺伝子のうち、約半数が膜蛋白質や膜輸送系に関与していることが予測されている。その他現象への関与では、これら機能予測より推測される現象について評価する予定である。加えて、抗生物質耐性や浸透圧耐性、病原性など、機能予測以外の現象への関与も評価することにより、未知遺伝子の機能特定や、これまで知られていなかった機能を明らかに出来ると考えている。
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Research Products
(1 results)