2015 Fiscal Year Annual Research Report
環境調和型ヒドロキシアミノ化反応の開発とcaprazamycin類の全合成
Project/Area Number |
14J08019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 斐有 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 全合成 / CPZEN-45 / caprazamycin / チオウレア触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
WHOによると、現在においても世界人口の約3分の1が結核に感染している。また、結核による死亡例は、公式に判明しているだけで年間145万人以上、我が国においても年間約2000人が犠牲となっている。さらに、既存薬での治療が困難な超多剤耐性結核菌(XDR-TB)の新規患者数は年間10万人以上に上る。CPZEN-45は、caprazamycin類から半合成的なスクリーニングによって見出された新規抗生物質の一種である。特に、超多剤耐性結核菌(XDR-TB)にも有効であるため注目を集めている。平成27年度は、(1)syn-β-ヒドロキシ-α-アミノ酸部位の大量合成法の確立、(2)銅触媒による7員環エナミド部位の効率的構築法を確立し、CPZEN-45の合成研究を行なった。以下その詳細を報告する。 (1)においては、アルデヒドの基質制御によるジアステレオ選択的なアルドール反応を試みた。その結果、ウリジン由来のアルデヒドにおいて、2位、3位のヒドロキシ基を嵩高いTBS基で保護することで、炭酸カリウムのみで、良好な収率・ジアステレオ選択性でsyn-β-ヒドロキシ-α-アミノ酸部位の大量合成に成功した。 (2)については、L-セリンから誘導化したビニルヨウ素化体をヨウ化銅で処理することで、ビニル-アミドカップリングが良好に進行し、対応する7員環エナミド部位の構築に成功した。また、本環化反応には、溶媒・添加剤の効果が重要であることが明らかとなった。さらに、得られた知見をCPZEN-45の合成に必要な、ウリジン由来の環化前駆体へと適用した。その結果、予想通り本環化反応は迅速に進行し、基質の分解を伴うことなくCPZEN-45の7員環エナミド部位の構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、caprazamycin類から誘導化された核酸系抗生物質CPZEN-45の合成研究を行なった。具体的には、(1) 基質制御によるジアステレオ選択的なアルドール反応を用いたsyn-β-ヒドロキシ-α-アミノ酸部位の大量合成法の確立、(2) 銅触媒による7員環エナミド部位の効率的構築法を確立した。 CPZEN-45は、既存の薬剤を用いた治療が事実上困難な超多剤耐性結核菌(XDR-TB)にも有効であるため、注目されている。しかしながら、その供給方法は半合成に依存するものである。また、その大量供給が求められているにもかかわらず、不安定構造を有する本化合物の化学的合成法は未だに確立されていない。以上の事実から平成27年度に見出した基質制御によるsyn-β-ヒドロキシ-α-アミノ酸部位の大量合成法の確立、及び銅触媒による7員環エナミド部位の効率的構築法の確立は、CPZEN-45の化学的供給に大きく寄与していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、(1) 基質制御によるジアステレオ選択的なアルドール反応を用いたsyn-β-ヒドロキシ-α-アミノ酸部位の大量合成法の確立、(2) 銅触媒による7員環エナミド部位の効率的構築法を確立した。 平成28年度においては、(1) 前年度得られた知見を基に、銅触媒を用いたエナミド部位の構築における、リガンド及び添加剤の効果についてスクリーニングする。さらに、(2) 得られた7員環エナミド部位を含む環化体について、CPZEN-45の初の化学合成による供給を目指す。また、CPZEN-45についてその大量合成の確立、及びさらなる収束的合成の確立も検討する計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] カプラザマイシンAの全合成2015
Author(s)
〇中村斐有、塚野千尋、安井基博、竹本佳司
Organizer
第13回次世代を担う有機化学シンポジウム
Place of Presentation
立命館大学、びわこ・くさつキャンパス、滋賀県
Year and Date
2015-05-22 – 2015-05-23