2015 Fiscal Year Annual Research Report
ベクトル中間子核内質量分布の高統計高精度測定によるハドロン質量獲得機構の研究
Project/Area Number |
14J08572
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小原 裕貴 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ハドロン物理実験 / 荷電粒子検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最も大きな目的として、原子核内におけるベクトル中間子の質量分布を高統計かつ高精度で測定し、原子核密度化における中間子の質量変化を観測することである。モデル計算に依存しない明確な核内質量分布を測定することで、理論的および実験的に一致した見解を得るに至っていない現状を打開し、中間子の核内質量分布に関する今までにない知見が得られるという点において、本実験を遂行することは非常に重要である。 高統計かつ高精度の測定を行うために、荷電粒子検出器にGas Electron Multiplier (GEM) を用いた高計数耐性、高位置分解能、低物質量、高い電子同定能力を備えたスペクトロメータを開発する必要があり、主にスペクトロメータ内に設置される荷電粒子飛跡検出器であるGEM Trackerとこれを用いたデータ取得の対象となる事象を決定するトリガーシステムの開発に従事している。これに加えて、本年度は磁場中でのGEM Trackerの性能評価を目的としたビーム試験を実施した。 GEMのフォイル側から信号を読み出すためのApplication Specific Integrated Circuit (ASIC) の第2版を搭載した本番の実験で使用する基板のプロトタイプを設計・製作した。このASICから出力されるデジタル信号を処理および動作を制御するField Programmable Gate Array (FPGA) とASICの通信に成功した。 磁場中でのテスト実験に関するGeant4ベースのシミュレーションコードと磁場中での陽電子の飛跡を求める解析コードを製作し、シミュレーションのデータと実データを比較することで、GEM Trackerのローレンツ角と磁場中での位置分解能を評価し、要求性能を満たすことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ取得の判断を下すGEM Trackerにおけるトリガーシステムに関して、ASICの第2版を搭載したボードの製作が完了し、ASICとFPGA間の通信を確立したことは、想定通りの進捗である。テスト実験によって、磁場中でのGEM Trackerの性能評価を予定通り実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
各検出器の開発や性能評価などは概ね終了しているため、今後は今まで得られた性能を元にスペクトロメータ全体のでの性能をGeant4ベースのシミュレーションにて、評価する予定である。評価および開発項目としては、GEM Trackerの位置分解能の情報を用いて、スペクトロメータの質量分解能の評価、バッググラウンド環境下でのTrack FindingとFittingのアルゴリズムの開発、バッググラウンドが作るファイ中間子の質量領域での分布の評価がある。 トリガーシステムに関しては、上記のシミュレーションをもとにデータ取得の判断を決定する論理を表現したファームウェアを実装し、トリガーの決定をするモジュールとトリガーを各検出器に分配するモジュールの開発を行う予定である。
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