2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳血流変化を用いた感情制御アセスメントの構築-不快感情の認知的制御の検討-
Project/Area Number |
14J09677
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小澤 幸世 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 感情制御 / NIRS / ワーキングメモリ / 抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日常生活の上で重要となる不快な感情の制御(感情制御)について、認知神経科学的見地から実証的に検証した。感情制御の方略としては、気晴らしの方略とされる「ディストラクション」を取り上げた。ディストラクションとは「不快な対象物や気分から注意を逸らす」という注意配分による感情制御方略である(Stone & Neale, 1984)。先行研究では、ディストラクションとして認知課題が用いられるのが一般的であったが、本研究では、身体的活動によるディストラクションにまで踏み込んで議論した。また先行研究では、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた検討が通常であるが、本研究では、被験者への負担が少なく、低年齢の子ども、高齢者、患者群など、多岐にわたって適用可能な近赤外線分光法(Near-Infrared Spectroscopy; NIRS)を用いた。NIRSは頭表に近い領域の血流変化を測定するため、感情処理を行う脳深部の血流変化を測定することはできない。そのためNIRSを用いた感情制御の検討を可能にするためには、感情処理に関わる脳活動を頭表に近い領域で捉える必要がある。近年のNIRS研究の動向では、NIRSで測定可能な前頭前野領域において、感情変化を捉える試みがなされている。この動向を背景に、本研究でも、前頭前野で感情処理に関わる脳活動を捉えられるか否かを明らかにするため、2つの準備的検討(実験1と2)を行った。その後に、適度な速度のタッピング(身体的活動)の遂行が、不快な感情を抑制するか否かを検討した(実験3)。その結果、速度な速度のタッピングが不快感情を潜在的に減少し、課題遂行に伴う前頭前野の中央部の脳活動を減少させることが示された。適度な速度の身体的活動に、ディストラクション効果があることが示唆された。 以上の内容は博士論文としてまとめられ、2015年3月24日に博士の学位を取得した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究成果としては、予定通り正規課程の間に博士論文を執筆し、学位を取得した。学外に向けた研究活動としては、「日本心理学会第78回大会」「日本認知科学会第 31回大会」「国際シンポジウム ペダゴジカル・マシンの探求」において、これまでの研究成果を発表した。研究成果についても、2015年5月頃に投稿予定である。全体的に、問題のない進捗状況であり、予定通り研究計画が進んでいると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに、認知課題と身体的活動を用いた方略による感情制御の検討を行ってきた。いずれも自己による感情制御方略である。しかし、臨床的介入を考慮したとき、受動性が高い方略の方が適している場合があると思われる。そこで、今後は他者による感情制御方略の検討を行う。またこれまでに行った身体的活動による検討では、身体的活動によるリズム感の創出が、快感情を創出していた可能性が示唆された。このことは、快適な速度の身体刺激によっても、不快感情が減少する可能性を示唆している。そこで今後は、他者による快適な速度の身体刺激が不快感情を減少するか否かを検討する。
|
Research Products
(4 results)