2014 Fiscal Year Annual Research Report
臭化銅有機溶媒系を用いた使用済み機器からの貴金属・レアメタル回収プロセスの開発
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14J09845
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 彰大 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | リサイクル / 貴金属 / 使用済み機器 / 有機溶媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、金の細線を対象とした有機溶媒を利用した回収手法の手法を確立した。具体的には、臭化銅(CuBr2)、および臭化カリウム(KBr)を含有するジメチルスルホキシド(DMSO)による金(Au)の溶解、およびその溶媒に硫酸(H2SO4)を添加することによる析出を確認した。析出物はAuのみで組成されており、また溶解量の90%程度を回収できることから、Auの容易な溶解・析出手法を確立できた。また、DMSO・水混合溶媒を蒸留することで水のみを選択的に除去でき、溶媒を再度利用できることも確認された。以上のことから、貴金属のリサイクルを行う「閉サイクル」の構築について、Auの細線について確立できたと考えている。 通常の湿式法による貴金属リサイクルでは、王水やシアン化物といった危険な薬品を用い、またそれらの消費が比較的大きいことが問題となる。また、使用済み薬品の発生による環境負荷も問題となる。それに対し、本研究で進めている処理手法では、使用する試薬の危険性、環境負荷が比較的低いこと、また溶媒を複数回利用できることが特長として挙げられ、前述した問題は回避できる。 また、実際の基板には銅(Cu)やニッケル(Ni)などの金以外の金属が利用されており、貴金属の回収に際して阻害要因となると考えられるため、これらについても溶解、析出実験を行った。その結果、CuやNiについて溶解・析出が確認されているが、これらについては析出時のpH調整によって選択的な析出が可能であることを確認した。一方、ハンダの成分であるスズ(Sn)については、どのような析出条件でも析出し、貴金属の析出を阻害することが明らかになった。これらのことから、実際の使用済み機器から貴金属を回収する場合にあらかじめ除去が必要な元素について評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目標は、使用済み機器に含有される貴金属の容易な回収手法の開発であり、現状ではその前段階である純金属の溶解、析出について実験、研究を進めている。その結果、Br系、およびCl系を用いた貴金属の溶解、析出を確認しており、既存の手法に比べて経済的、環境的負荷の小さな貴金属のリサイクル手法を確立できたと考えている。 今後は、この手法を実際の使用済み機器、およびそこに含有されている基板に適用することで、社会中で利用可能なリサイクルシステムの確立を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
DMSOには基板に使用されている他の金属、および樹脂に対する溶解能があり、未処理の基板に対して本手法を適用すると貴金属以外の物質も溶解し、水を添加するとそれらの析出が優先的に発生し、貴金属を回収できないことが確認されている。そのため、現状では純金属の試料のみ回収が確認されており、実際の使用済み機器からの貴金属の回収には至っていない。 今後は、実際の使用済み機器に対して適切な前処理を施すことにより、本手法を実際のリサイクル手法として運用するために必要な条件などの評価を進める。 また、塩化物が金化合物として一般的に利用されていることを鑑み、酸化剤として塩化銅(CuCl2)を、析出財として塩酸(HCl)を用いた系についても研究を進める。 最終的には、上記の結果を元に社会中で運用できるリサイクルシステムの確立を目指す。
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Research Products
(5 results)