2014 Fiscal Year Annual Research Report
スラブ起源流体の地殻内における移動過程および熱水性鉱床生成への寄与の解明
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14J10351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大田 隼一郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / 熱水性鉱床 / 海底堆積物 / 物質循環 / 元素濃集 / 北西太平洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本列島などのプレート沈み込み帯と呼ばれる場所では、海嶺で生まれた海洋プレートが1億年以上もの時間をかけて移動し、大陸プレートの下に沈み込んでいる。沈み込み帯では、プレート上に長い時間をかけて堆積した海底堆積物に含まれる様々な物質が、沈み込みによって地下数十キロの深部にもたらされ、高温高圧反応にマントル中へ放出される。これらの物質は地表へ向かって移動し、火山活動や鉱床生成など陸上で見られる様々な現象に影響を与えている。本研究では、このような沈み込み帯における物質循環が、陸上の熱水性鉱床生成にどのような影響を与えるかを調べるために、物質循環の「結果」である鉱床生成に着目してきたが、その前提として沈み込み帯にもたらされる「元物質」である海底堆積物について詳細に知らなければ、その後の過程と結果を議論できないことがわかってきた。そこで本研究では日本列島の深部にもたらされる海底堆積物として、北西太平洋の日本列島付近から採取された堆積物を用いて、顕微鏡による鉱物学的な研究および元素組成分析を行った。 鉱物学的研究の結果、研究海域の一部の層準に生物遺骸と推定されるリン酸カルシウムと、非常に安定した海域において堆積物中で成長する灰十字沸石が多量に見られることがわかった。そして、元素組成分析の結果、この層準ではリン、レアアースなどの元素が他の海域に比べて異常に濃集していることが分かった。 本研究によって、上述したような北西太平洋の一部海域にある海底堆積物には他の海域に見られない非常に特異な鉱物学的特徴と元素濃集が見られ、このような堆積物が日本列島の深部に持ち込まれている可能性があることがわかった。今後、堆積物に見られる特徴的な元素をトレーサーとして用いることで、沈み込み帯における物質循環の解明が大いに進展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
沈み込み帯における物質循環の解明は、人間が直接観測することのできない地球深部における現象であるという点、スケールや条件の大きく異なる要素が複雑に関わる現象であるという点から、地球科学の中でも非常に難しい問題の一つであり、現在分かっていることは極めて限られている。この問題を解決するためには、多面的な視点から研究を行わなければならない。この問題に対し、本研究では様々な幅広い研究手法を用いて着実に解決に近づいてきた。当初から行っていた数値解析や安定同位体比をトレーサーとして用いた手法には、沈み込み帯にもたらされる元物質の特徴を把握し、初期条件・境界条件を制約することが必要不可欠であることを見出し、元物質である海底堆積物を詳細に研究することへと視点を大きく変えた。そして、顕微鏡観察などの従来からある手法と、同位体比組成分析などの最新の手法を組み合わせ,沈み込み帯における物質循環の初期条件・境界条件だけでなく、海底堆積物の元素濃集機構に対しても卓越した知見が得られつつある。したがって、本研究は期待以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の要となるのは、沈み込み帯にもたらされる海底堆積物の特徴を空間的に広範囲に把握すること、海洋における物質循環と海底堆積物への物質濃集の関連性を明らかにすることである。海底堆積物は、それが存在する海域の環境を反映して構成鉱物・構成元素の特徴が異なっており、沈み込み帯における物質循環にも本質的に影響を与える。本研究では今後研究海域を拡大し、北西太平洋のより海溝に近い海域から採取された堆積物および南太平洋の堆積物について同様の研究を行っていく。さらに、沈み込み帯にもたらされる「元物質」である海底堆積物のさらに「元」をたどれば、海洋の物質循環の変遷にたどりつく。海底堆積物は、過去の海洋の物質循環の変遷を記録しながら堆積したものであり、海洋の環境変動が海底堆積物中の元素濃度分布として現れる。したがって、沈み込み帯における物質循環と海洋の物質循環とは不可分な関係にある。本研究ではこの点に着目し、海底堆積物における元素濃集と過去の海洋の物質循環との関連を明らかにするために、研究に用いた試料の年代測定を行う。堆積物の堆積年代を知ることで、当時の海洋環境と元素濃集とを関連付けて議論することができる。現在研究で用いている堆積物試料は、比較的安定した海域でゆっくりと堆積した遠洋性堆積物であり、過去の海洋環境変動の記録を高密度に保存していると考えられるため、本研究に適した試料である。本研究では年代決定手法としてストロンチウム同位体比、オスミウム同位体比による同位体層序年代を用いる。同位体層序年代の堆積物への適用は比較的新しく適用例は少ないが、高解像度であるという利点がある。本研究では既に独自に信頼性の高い手法を確立しているため、今後さらに分析数を確保し、高精度な年代決定を行う。
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[Journal Article] REY-Rich Mud: A Deep-Sea Mineral Resource for Rare Earths and Yttrium2015
Author(s)
Nakamura, K., Fujinaga, K., Yasukawa, K., Takaya, Y., Ohta, J., Machida, S., Haraguchi, S. and Kato, Y
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Journal Title
Handbook on the Physics and Chemistry of Rare Earths
Volume: 46
Pages: 79-127
Peer Reviewed
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