2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10688
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大前 まどか 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 血管形成 / 臓器形成 / 個体発生 / ゼブラフィッシュ / 臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、臓器間をつなぐ血管の形成機構および生理学的機能を明らかにすることで、臓器の発生や成長過程における「臓器間の血管ネットワーク」を解明することを目指している。臓器間の血管ネットワークの解明には、ヒトと同等の臓器と血管構造を持っていること、また、血管のダイナミックな動きをライブで捉えることが重要であるため、研究対象にはゼブラフィッシュを選んだ。申請者はこれまで、肝臓と膵臓のつなぐ4本の血管を同定している。今年度はこれら4本の血管をモデルに、以下に述べる2つの実験に取り組んだ。 実験1:肝臓と膵臓の間をつなぐ血管が臓器依存的に形成されるかどうかを検討するため、肝臓または膵臓特異的にNitroreductase(NTR)を発現する遺伝子組み換えゼブラフィッシュを作製した。NTRを発現している細胞にMetronidazole(Mtz)を添加すると、Mtzが還元される。還元されたMtzはDNAダメージを引き起こし、細胞死を誘導する。細胞死が効率よく誘導されたかどうかは、顕微鏡を用いて臓器の体積を観察することにより評価した。しかし、コントロールと比較し、肝臓および膵臓の体積には顕著な差がみられなかった。そこで、異なる手法を用いて作製された肝臓特異的にNTRを発現するゼブラフィッシュを他の研究室から入手し、同様の方法で細胞死が誘導できるかどうかを検討した。薬剤処理は受精後2.5日目から72時間行った。その結果、肝臓の体積が約5分の1に減少した。 実験2:臓器の成長過程において、臓器間をつなぐ血管の生理学的機能を明らかにするため、肝臓と膵臓をつなぐ4本の血管のうち1本の血管を破壊し、臓器間をつなぐ血管が形成されない条件を作製した。具体的には、フェムト秒レーザーを用いて血管を破壊する手法の確立に取り組んだ。さらに破壊後の経過観察により、破壊後、約12時間で再生することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ゼブラフィッシュの臓器の発生や成長過程における臓器間血管ネットワークの解明を進めていく上で、必要な実験系の確立ができた。また、これらの実験系を用いて、来年度にどの部分に焦点をしぼって具体的な研究を進めていくかに関する知見が得られた。そのため、研究プロジェクトは順調に予定通り進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1の結果より、今後は、この遺伝子組み換えゼブラフィッシュを用いて、人為的に肝臓に細胞死を誘導し、臓器形成不全条件下での血管形成の有無を明らかにしていく予定である。 実験2の結果より、今後はこの血管の生理学的機能に着目し、血管を破壊した条件下での肝臓と膵臓の成長や形態の変化、また、肝臓および膵臓内で発現している主要な遺伝子の発現量の変化を検証する予定である。しかし、この手法では破壊した血管が12時間以内に再生してしまい、恒常的な血管の破壊は困難であるため、恒常的に血管を破壊するための別の手法を確立することも目指す。
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