2014 Fiscal Year Annual Research Report
視覚刺激の物理的特性と意識的な知覚が乖離した条件における視覚的な文脈効果の解明
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14J10958
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 大輔 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 視覚的文脈効果 / 時間解像度 / 意識的気づき / 傾き残効 / Collinear Facilitation効果 / 方位知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚処理過程における文脈効果に関する実験心理学的研究を行った。文脈効果とは、ある刺激の知覚が周辺にある刺激の影響を受けて変化することであり、その研究は、ヒトの視覚世界がどのように構築されているのかを理解する上で重要である。刺激の物理的な特性と意識的な知覚が乖離しているような条件で、様々な文脈効果が起こるのかを調べることで、視覚情報処理がどのように行われているのか、視覚情報処理過程において視覚情報がどのように表現されているのかについて、心理物理学的に研究を行った。まず、D2図形を用いた実験によって、文脈効果の時間特性について実験を行った。D2図形とは、縦や横といった方位を持ち、また、互いに直交するもの同士を交互に素早く呈示すると同心円に見えるという性質を持っている。この刺激と、傾き残効という文脈効果を用いて、方位という視覚情報がヒトの視覚過程においてどのように処理されているのかを調べた。予備実験の結果、傾き残効が、知覚的には物理的な同心円と全く区別がつかないような60Hzという非常に高い時間周波数でD2図形を交互呈示しても起こることが示された。このことは、視覚系がD2図形の交互呈示、すなわち直交する方位刺激の交互呈示に対して、非常に高い時間解像度を持っている可能性を示している。また、Collinear Facilitation効果という文脈効果についても実験を行った。Collinear Facilitation効果とは、上下に高いコントラストの縦縞(フランカー)があると、中心に呈示された低いコントラストの縦縞(ターゲット)が検出しやすくなるという現象である。この現象が、フランカーの方位が意識にのぼらないような条件でも起こることを実験で示し、論文誌に投稿、査読結果に基づいて追加実験を行い、そのメカニズムを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、刺激の物理的な特性と意識的な知覚が乖離しているような条件として、互いに直交するD2図形同士を交互に素早く呈示して、傾き残効という文脈効果が起こることを予備実験で示した。この結果が得られたことで、初年度の計画であった部分まではおおむね達成できている。また、これまでに行っていた方位刺激の検出の促進に関する研究についても、追加実験を行い論文採択に向けて順調に進んでいる。さらに、それ以外にも共同研究を行い、クラウディング効果という文脈効果や、新たに発見した錯視についての実験を行っており、それらの成果について学会発表を行っている。以上のことから、現在までに研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、傾き残効という文脈効果が、呈示された刺激の方位が意識にのぼらないような条件でも起こるという予備実験の結果について、ナイーブな参加者で実験を行うことで、データを収集して結果の頑健性を示す。その結果を学会で発表するとともに、発展的な実験を行い、最終的に論文にまとめる。また、先日研究室のセミナー中に発見した新たな錯視についても、実験を行いメカニズムを明らかにして行き、学会発表するとともに論文にまとめる。「物理的には存在しないが知覚的には存在するような方位情報」と、視覚的文脈効果の関係についても、予備的な実験を行っていく。
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Research Products
(4 results)