2014 Fiscal Year Annual Research Report
高速回転スキャンを実装したCMB偏光観測実験によるインフレーション宇宙論の検証
Project/Area Number |
14J10972
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
小栗 秀悟 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 宇宙物理 / CMB |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CMB偏光観測を行うための望遠鏡GroundBIRDを開発し、インフレーションモデルに観測的な制限をつけることを目的としている。インフレーション起源の痕跡を検出するためには、空の広い範囲の測定が必要である。検出器は時間がたつとベースラインがドリフトしてしまうため(~10秒)、望遠鏡をいかに速く振り回せるかが鍵となる。そこで申請者は、望遠鏡を回転台の上に載せて回転させながらの観測を計画している。 初年度は回転台の上にのせる冷却系の作製を行った。本研究の特色の一つは、光(電波)を集光する主鏡と副鏡を5Kまで冷却することである。これにより、鏡からの熱放射による熱雑音を低減できる。鏡は50cm四方程度の大きさがある。鏡や検出器を冷却するために、周囲(300K)の熱放射から守るための2重の冷却シールドを作製した。シールド間の構造体には繊維強化プラスチックを用いて熱伝導による熱流入を防ぎ、シールドの接合部には迷光が入り込まないように留意した。望遠鏡の窓に対応する部分には、観測に関係の無い周波数の光を防ぐためにQMCから購入したメタルメッシュフィルターと申請者の開発したRT-MLIを設置した。これらの工夫により望遠鏡内部を4.8K、超伝導検出器を冷却するための最も冷える部分は0.22Kまで冷却することに成功した。 これと並行して、新開発の超伝導検出器MKIDの性能評価にも携わった。回転台の上で実際にMKIDを使用することで、ノイズがどの程度発生するかを評価した。世界で初めての試みで、国際学会でも大きな反響を得た。 学生の指導をする形で、MKID読み出し用の回路基板の開発にも関わった。作製は完了し、性能評価でもスペックが十分であることを確認した。現在FPGAのコーディングの修正を行っており、夏にはMKIDの読み出しが可能になる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
望遠鏡製作の最も難しい部分は窓から光(電波)を取り入れた状態で、検出器を設置する部分を250mKという極低温まで冷やすことである。今年度はそれに取り組み、実際に220mKまで冷却することに成功した。MKIDの準備が遅れ、試験運転までは至らなかったが、想定されうる課題はクリアしており、おおむね順調に進展している。 また、MKIDの回転台上での性能評価は、本来、試験運転後にする予定のものであり、この部分はスケジュール以上の進度である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、理研などと協力し、MKIDを望遠鏡に載せるための準備を行っている。夏を目処に、MKIDを望遠鏡に組み込み、試験運転を行う。その後は予定通り、ワイヤーグリッド等を用いて検出器の較正、評価を行う。すでに検出器の雑音レベルの評価はできているので、電波に対する感度が評価できれば、本観測でどこまで詳細にBモード測定ができるかの試算をすることができる。 年度後半は、観測サイトへの移動の準備も始める。
|
Research Products
(6 results)