2014 Fiscal Year Annual Research Report
中学・高校の学校行事の発達的意義と活動の在り方に関する教育心理学的検討
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14J11072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河本 愛子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 学校行事 / 意味づけ / 教師 / ライフ・イベント / 文化祭 / 合唱祭 / 体育祭 / 集団社会化理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の学校では,授業のみならず,文化祭や体育祭などの学校行事が,ごく当たり前に行われている。ところが,学校行事の実際の機能に関する実証的知見は乏しく,その実施方法もほとんど考究されていない。そこで,本研究では,中学・高校の学校行事体験が,その後の個人のいかなる社会情緒的発達に寄与するのか,そして,活動がいかなるプロセスを経て個人の社会情緒的発達に影響するのかを明らかにすることを目的とし検討を行った。 本年度は,大学生,教員,高校生という3つの観点からデータ収集を行い,確かに学校行事体験は,その活動に夢中になった者については,高校卒業後の社会情緒性の発達に有用であると意味づけられること,そのプロセスにおいては,活動集団に熱心な風土があること,また自身がリーダーなど重要な役割についていることが重要であるという示唆が得られた。そのため,学校行事が個人の発達におよぼす長期的な影響を検討するにあたっては,集団社会化理論という理論が適用できることが示唆された。 次に,教員の語りを検討した結果,教員自身の中学・高校の学校行事体験は,生徒に対する共感性や現在の学校行事観につながり,学校行事における効果的な指導に活かされ得ることが明らかになった。さらに,集団社会化理論で想定されるように,教員は生徒集団の風土や役割の獲得に関して多様な働きかけを行っていることが示唆された。 最後に,高校生対象の研究では,文化祭体験を通じてクラスの中での差異化が深まり,クラスの風土や個人のスキルに変化がみられることが示唆された。ただし,その変化の仕方は生徒の元々のスキルの高さによって異なっていた。 以上の研究成果は,国内外の様々な学会で発表を行い,上記の成果の一部に関しては2本の学術誌論文にまとめた。 またここで得られた知見は,教育現場に対しても有用な実践的含意を有すると考えられたため,教員向けに成果の発表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は概ね当初計画していた予定通り,アンケート,インタビューともに着実にデータ収集を行っている。今年度は調査実施が困難であることが予想された高校において10か月にわたり定期的にデータ収集を行うことができ,貴重なデータを得ることができた。 またその研究成果についても,国内外双方にて学会発表を行った。国内では日本教育心理学会,日本発達心理学会の2つの学会で,日本全国の研究者と最新の知見について議論を交わした。国外ではICAP(the International Congress of Applied Psychology)という国際学会で,世界各国の研究者に日本の学校行事という教育文化を知ってもらい,各国の教育状況に関する情報交換も行うことができた。来年の国内外の学会に向けた研究知見の発表の準備も行っており,いくつかの要旨は既に受理されている。 学術論文としても発達心理学研究ならびに東京大学大学院教育学研究科紀要と2本の研究成果が受理され発行された。発達心理学研究は査読付きの学術雑誌である。また,東京大学大学院教育学研究科紀要は,査読はついていないものの,インターネットに学術論文が掲載される性質を持つ学術論文で,今後,広く知見が発信されることが期待される。 さらに,研究成果に関しては学術的な発信のみならず,高校の教員向けに発信する機会も設け,研究者はもちろん,実践現場の教員にも積極的に知見を発信している。以上より,現在の研究状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,学会にて発表した研究知見を学術論文としてまとめ,投稿することを目指す。また,今年度収集したアンケートおよびインタビューデータについては,その分析を進め,国内外の学会にて知見が発信できるよう準備を進める予定である。 さらには,現在,既にデータを収集している高校での調査に関して,年度をまたいで引き続き定期的にデータを収集する予定であり,複数の学校行事をまたいだ経年変化および長期的な発達の変遷を分析する予定である。
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Research Products
(7 results)