2014 Fiscal Year Annual Research Report
静水圧平衡近似を超えた銀河団ガス分布の動力学的モデル構築
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14J11473
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須藤 大地 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 銀河団 / 静水圧平衡 / ダークマター / 宇宙の構造形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目標である、静水圧平衡近似を超えた銀河団ガス分布の動力学的モデルの構築をするため、銀河団を構成するダークマターハローやガスの分布に関する球対称の仮定の妥当性を詳しく検証した。 ダークマターハローの非線形成長を記述する最も簡単なモデルが球対称崩壊モデルであるが、それを球対称ではない楕円体のハローに拡張したモデルが楕円体崩壊モデルである。先行研究の中に、楕円体崩壊モデルの予言では重いハローほど球対称性が高いのに対して、宇宙論的シミュレーションから取り出したハローは軽いほど球対称性が高いという矛盾した結果がある。 本研究では、新たに用意した高精度の宇宙論的シミュレーションを用いてこの矛盾の存在を改めて確認した。さらに、この矛盾の原因をを追及するために、まず、楕円体崩壊モデルのもとになっている球対称崩壊モデルが、シミュレーションから取り出したダークマターハローの進化をどの程度よく記述しているかを検証した。その結果、球対称崩壊モデルはダークマターハローの半径が最大になる時刻を早く、また、その最大半径を小さく予測することがわかった。さらにビリアル定理が予言するハローの現在の半径は、シミュレーション中のハローの半径よりも小さいことも発見した。そして、上記の不一致はダークマターの運動を記述する方程式である、ジーンズ方程式の速度分散を含む項をモデルに導入することで解決できることを示した。 これらの結果は静水圧平衡近似を超えた銀河団ガス分布の動力学的モデルの構築の足掛かりとなるばかりでなく、宇宙の構造形成について従来より進んだ理解を助けるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の目標である、静水圧平衡近似を超えた銀河団ガス分布の動力学的モデルの構築に向けて、その基礎となるような結果を得ることができた。 ただし、大規模かつ高精度のシミュレーションデータを扱っているため、その解析に多大な計算時間を要してしまい、平成26年度中に得られた結果を発表論文の形にまとめることはできなかった。ただしその解析自体はある程度想定通り進んでおり、学会発表の形にはできている。近日中に結果を整理して論文にまとめ、さらに先の研究に進むことができると予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的にはこれまでの研究を延長する方針である。まずは、これまでに得られた結果をもとに、ダークマターの速度分散の進化を記述できるような理論構築を目指す。それを用いて球対称崩壊モデルを修正したモデルを構築し、新たなモデルが現実の観測に及ぼす影響を吟味する。 さらに、今回の結果を基礎にして、ダークマターハローの楕円体崩壊モデルと宇宙論的シミュレーションとの間の矛盾点を探る。その原因を詳らかにしたうえで、楕円体崩壊モデルを修正して、シミュレーションと矛盾しないような、球対称性を仮定せずにダークマターの非線形成長を記述するモデルを構築する。そのようなダークマターのモデルをもとにして銀河団ガスの非球対称な分布や進化を記述するモデルを考案し、最終的に「静水圧平衡近似を超えた銀河団ガス分布の動力学的モデルの構築」という目標を達成する。
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Research Products
(2 results)