2014 Fiscal Year Annual Research Report
熱起電力計測を中心とした単分子接合の電子状態規定と新規物性探索
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14J11516
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 龍二 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 熱電能 / 電子構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、 1, 熱起電力と電気伝導度の同時計測に基づく、単分子接合の電子構造解析法の開発・適用 2, 振動分光による単分子接合の原子構造解析 を行うことで単分子接合の物性発現のメカニズムを解明する事を目的としている。 単分子接合の電子構造解析法の開発に関して、電気伝導度-熱起電力同時計測システムを立ち上げることができた。本計測システムを室温付近で金原子接合に適用して電気伝導度-熱起電力同時計測を行った。熱起電力の値が0 V付近を中心に両側の極性に分布するという金原子接合特有の熱起電力分布が観測された。更に熱電能の接合温度依存性を調べたところ、およそ320 Kを境に熱電能の分散が減少した。以上、金単原子接点の構造変化に由来する熱電能変化を観測する事に成功した。 次いで、低温(~100K)でも室温と同様の計測を金単原子接合に対して行い、室温の結果と比較した。その結果、熱電能絶対値は室温における値よりも低温における値の方が大きかった。熱電能の値は、フェルミ‐ディラック関数の形状の温度依存性や金単原子接合の電子構造に依存する事を示唆する結果を得た。現在は単分子接合の電気伝導度-熱起電力同時計測に向け研究を展開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単分子接合の電子構造解析法の開発に関して、電気伝導度-熱起電力同時計測システムを立ち上げることができた。また、本システムを金単原子接合に適用して加熱による熱電挙動変化などを観測できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、分子が金属ナノギャップ間に架橋した分子接合に対して本システムを適用する。まず金-1, 4-ベンゼンジチオール(BDT)分子接合に着目する。金-BDT分子接合は電気伝導特性に関して理論・実験両面で先行研究が多く存在しており、本研究で得られた結果を詳細に解析・考察することが可能であるため、単分子接合の熱電物性研究のテスト系として最適である。一方、BDT分子においてでさえ、原子・電子構造を規定した熱起電力測定を行った例は殆どなく、原子・電子構造を規定した熱起電力測定が望まれる。そこで、本系に対して、熱起電力-電気伝導度同時計測、さらに、振動分光法である非弾性トンネル分光法を組み合わせることで、接合の架橋状態の規定、すなわち、原子構造と電子構造の規定を行う。これらの計測を実施するためには接合に高い安定性が求められるため、低温(数十K)において実施する。そして、発現する物性(熱起電力)がどのよう原子構造・電子構造に由来するか、ということを明らかにしたい。さらに、PtやNi等の電極金属・水素等の分子を組みわせて熱電物性の探索を行い巨大熱電能の発現やその発現機構の解明を目指したい。
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Research Products
(5 results)