2014 Fiscal Year Annual Research Report
漸近的複素双曲アインシュタイン計量の変形の研究とその一般化
Project/Area Number |
14J11754
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 佳彦 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 幾何学 / 幾何解析 / アインシュタイン計量 / 漸近的複素双曲計量 / 国際研究者交流 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の研究によって、漸近的複素双曲アインシュタイン(ACHE)計量の微小変形可能性に関しては、二乗可積分(L2)無限小変形の有無が基本的な重要性を持つことが知られている。このことに基づき、与えられたACHEケーラー計量(有界強擬凸領域のCheng-Yau計量が代表的な例として挙げられる)について、そのL2無限小変形全体のなす空間を複素幾何学的な観点を交えて決定する問題に着手した。ACHEケーラー計量の場合に重要なのは、L2無限小変形全体の空間が、正則接バンドルに値をもつL2ドルボー・コホモロジー群の部分空間に対応するという事実である。このことに基づき、関連研究を参照しながら解決のための方策を立てた。なお、松本は本年度11月下旬からEcole normale superieure(フランス)に滞在し、この問題についてO. Biquard教授と議論している。 それに並行して、漸近的双曲計量や漸近的複素双曲計量を持つ多様体に対する調和写像の研究を、受入研究者である芥川一雄氏とともに開始した。2つの双曲空間(あるいは複素双曲空間)のあいだの調和写像に関する境界値問題についての研究が1990年代になされているが、われわれの研究はその一般化である。その解析的な手法がアインシュタイン計量の研究において参考になるのと同時に、調和写像の存在がアインシュタイン計量に関する直接的な応用を持つことも期待される。漸近的双曲多様体の場合については、調和写像の存在と一意性の証明を完成し、プレプリントとして公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時点における本年度の計画は、ACHE計量のL2無限小変形の一意接続性を重点的に研究し、漸近的双曲アインシュタイン(AHE)計量についてのM. Anderson氏の議論に倣って、ACHE計量のモジュライ空間が(何らかの位相的な条件のもとで)フレシェ多様体の構造を持つことを証明することであった。この計画は実際には修正され実行された。まず、「研究実績の概要」欄で述べたようにL2無限小変形の研究を行い、一定の成果を挙げた。この内容は当初第2年度目の研究として計画していたことを一部先取りしたものであり、同時に上述のACHE計量のモジュライ空間に関する予備的考察という側面もある。また調和写像に関する研究も合わせて行ったが、これも本研究の主要な対象であるアインシュタイン計量に応用の期待される内容である。全体として、ACHE計量の変形の理論を構築するという本研究の目的については、当初想定していた程度の進展があったものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ACHEケーラー計量に対するL2無限小変形を決定する問題については、本年度立てた解決の方策に従い、次年度中の成果発表を目指し研究を進める。また、それに続いてL2無限小変形の一意接続性の問題を考察し、ACHE計量のモジュライ空間の構造の記述を目指す。調和写像の研究についても、漸近的複素双曲計量の場合に重点を置いて、続行する予定である。
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Research Products
(5 results)