2015 Fiscal Year Annual Research Report
酸性オルガネラ機能制御に介在する低分子量Gタンパク質Arl8の機能解析
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14J12392
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 圭介 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | Arl8 / リソソーム / Bmpシグナル / 神経発生 / 神経管閉鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室で着目しているArl8(ADP ribosylation factor like 8)は、主にリソソームに局在する低分子量Gタンパク質で、これまでに線虫や培養細胞を用いた解析から、リソソームの微小管依存的な輸送や、エンドソームやファゴソームとの融合に促進的に機能することが明らかにされてきた。しかしながら、Arl8の個体レベルでの生理的役割に関しては未解明であったため、Arl8ノックアウトマウス(Arl8-/-)の解析を行った。 哺乳動物にはArl8aとArl8bの2種類のアイソフォームが存在するが、Arl8b-/-では出生前後で致死となり、胎生12日目において脳領域の構造に異常を生じることが明らかとなった。Arl8b-/-の脳構造を詳細に解析した結果、海馬や視床といった脳の背側領域から発達する領域の構造異常が顕著であったため、胎生10日目の脳の背側領域に着目して解析を進めたところ、脳の背側正中線に特徴的な発現パターンを示す遺伝子群の発現に異常が見られた。 脳の背側正中線は神経管閉鎖において神経外胚葉と非神経外胚葉の中間に形成されるNeural plate border(NPB)と呼ばれる領域から形成される。外胚葉からNPBの運命決定には神経外胚葉から非神経外胚葉にかけて形成されるBmpシグナルの勾配が重要であるとされるが、Arl8b-/-ではBmpシグナルが顕著に増強していた。 Arl8bはリソソームの物質分解に促進的に機能することから、Arl8b-/-ではリソソームでのタンパク質分解に異常が生じた結果、Bmpシグナルの負の制御に異常が生じたものと考察される。結果、外肺葉でのBmpシグナルの異常な亢進により、背側正中線の発生に異常を呈したものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスの脳神経発生においてエンドソーム-リソソーム経路がどのように寄与しているのかを解析された例はなく、また、Arl8のマウスの生体内での機能を見出した点で非常に興味深い。また、Arl8b-/-において異常の生じるシグナル伝達系に関しても解析が進んでおり、以上のことから当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はArl8b-/-におけるBmpシグナルの増強が、リソソーム機能の異常によるものであるかを検討したいと考えている。具体的には組織染色によって、Arl8b-/-の脳領域において後期エンドソームあるいはリソソームマーカーで染色されるオルガネラ内にBmp受容体あるいはBmpリガンドが蓄積しているかを検討する。また、MEF(Mouse embryonic fibroblast)を用いて、細胞をBmp刺激した際に正常胚から作出したMEFとArl8b-/-から作出したMEFで活性化されたBmpシグナルが負に制御されるまでの時間を検討することにより、Arl8b-/-で見られたBmpシグナルの増強が、細胞自立的であるかどうかを検討する予定である。
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