2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J40038
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
太田 茜 甲南大学, 理工学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 低温耐性 / 分子神経遺伝学 / 神経回路 / インスリン情報伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度は生体反応に直結する環境情報であるため、温度に対する適応機構は必須のシステムである。本申請者は、動物の温度適応システムの解明をめざし、そのなかで(1)温度受容や (2)温度メモリーに関わる新規の分子生理機構の解明をめざしている。 これまでに、「光を受容する感覚ニューロンが温度を感知し、インスリンを分泌することで、腸などに働きかけ「全身」の温度適応を制御する」という予想外の結果が得られたため、平成26年度中に、論文にて公表した(Ohta, Ujisawa et al, Nature commun, 2014)。さらに、温度メモリーに関わる分子および神経細胞の同定をすすめている。 1.運動下の光受容ニューロンにおける温度受容の生理特性をgenetically encodableなCa2+インディケーターで詳細に測定した。この解析は、上記の論文のリバイス実験としておこなった。 2. 低温耐性における記憶に関わる遺伝子の同定: 「温度記憶」が、どの組織によるどのような分子経路で制御されているかの同定をすすめている。現在までに、関与する感覚神経および介在神経を10~20細胞程度に絞り込むことができた。 3. インスリンの下流遺伝子と組織の解析: 低温耐性に関してインスリン情報伝達系の下流で発現調整が行なわれる遺伝子をDNAマイクロアレイ解析から抽出し、候補遺伝子の変異体の表現型解析から、いくつか低温耐性と温度適応記憶に関わる分子候補を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、前半に低温耐性に関わる新規の温度受容ニューロンASJの生理活性をCa2+インディケーター(カメレオン)で詳細に測定でき、リバイス実験をすべて終えて、論文を公表することができた。また、低温耐性について実験手法の詳細なプロトコルも公表した(Ujisawa, Ohta et al., Nature Protocol exchange 2014)。 次に、低温耐性を利用した記憶に関わる解析を開始し、温度シフトした際に、低温耐性状態が書き換えられるが、その書き換えに時間がかかる変異体を利用して、その細胞特異的レスキュー実験を行うことで、その分子が機能する神経細胞を特定したいと考えている。予想したよりも多くの複数のニューロンが関与する可能性が示唆されたため、現在は多数の発現プロモーターを利用して、ニューロンの絞り込みを行っている。 インスリンの下流因子については、DNAマイクロアレイ解析から抽出した多様な遺伝子を表現型と分子機構から、探っている。
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Strategy for Future Research Activity |
線虫において感覚ニューロンのレベルで記憶が行なわれる例があるため、前年度におこなった温度受容ニューロンASJの生理活性測定のためのCa2+イメージングをさらに詳細な条件設定でおこなう。微細な温度刺激を顕微鏡下で与える際の焦点のズレを緩和する装置を開発し、使用する予定である。 低温耐性の温度記憶に関わる機能細胞の同定は、前年度から引き続きおこなう。様々なプロモーターをもちいたレスキュー実験を試していく。 前年度にインスリン下流の遺伝子のうち、変異体において低温耐性に異常がみられた遺伝子の機能細胞を細胞特異的な表現型回復実験で同定する。
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Research Products
(11 results)