2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小形 正男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (60185501)
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Keywords | 有機伝導体 / 電荷秩序 / フラストレーションによる量子融解 / 電荷ゆらぎ / f波超伝導 |
Research Abstract |
本研究では、分子性導体中の電荷秩序状態近傍での電荷の自由度に着目して、それの引き起こす特異なダイナミクス、および超伝導に関する理論的研究を行うことを予定している。電荷秩序状態は、最近実験的に数多く見出されるようになってきたものであり、それに関する問題はまだ詳しく研究されていない。さらに、分子性導体では電子相関の効果も強いと考えられ、このような状況での電荷自由度に関し多くの課題が残されている。 電荷秩序状態は絶縁体であるが、それが融解すれば特異な伝導状態を生じることが期待される。これに関して、フラストレーションによって電荷秩序が融解する場合を厳密対角化によって調べた。その結果、2次元拡張ハバードモデルにおいて最近接クーロン斥力がフラストレーションを引き起こす場合、広いパラメータ領域で電荷秩序が融解した金属状態が見出された。 電荷秩序状態がゆらぎとなった場合、そのゆらぎを通して超伝導転移が可能である。θ-型有機導体は、分子が異方的三角格子を組んだ3/4フィリングの系であり、多くの物質において電荷秩序が見出されている。その1つであるθ-DIETS_2[AuCN)_4]は、常圧下においてT=226Kで金属-絶縁体転移を示すが、圧力によってこの相転移を抑制すると、絶縁相に隣接した超伝導が生じる。この場合、スピン揺らぎだけでなく、電荷揺らぎも超伝導に寄与すると考えられる。本研究では擬二次元有機導体のモデルとして異方的三角格子上での最近接斥力相互作用を持つモデルを調べた。具体的には、最近接斥力の値を三角格子上で等方的に取り、バンドは異方性をもつという状況を考えた。その結果、CDW相近傍でスピン一重項に加えてスピン三重項f波の超伝導が有利になることを見出した。CDW相近傍では、大きな電荷揺らぎのため、電子間の有効相互作用がある特徴的な波数において引力的になる。f波超伝導は、この引力を利用して安定化したと考えることができる。
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Research Products
(2 results)