2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073210
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小形 正男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (60185501)
|
Keywords | 有機伝導体 / 電荷秩序 / フラストレーションによる量子融解 / 電荷ゆらぎ / f波超伝導 |
Research Abstract |
本研究では、分子性導体中の電荷秩序状態近傍での電荷の自由度に着目して、それの引き起こす特異なダイナミクス、および超伝導に関する理論的研究を行うことを予定している。 θ-型有機導体は、分子が異方的三角格子を組んだ3/4フィリングの系であり、電荷秩序が見出されている。その1つであるθ-(BEDT-TTF)_2Xでは、三角格子のために最近接相互作用Vにフラストレーションが生じ、電荷秩序が壊れる量子融解という現象が起こる。今年度は平均場近似および変分モンテカルロ法を用いて量子融解が起きたあとの金属状態について詳しく調べた。今までは電荷秩序状態として、ストライプ型のものが考えられてきたが、最近提唱された新たな3倍周期を持つ電荷秩序状態も含めて拡張ハバードモデルの基底状態を調べた。その結果、量子融解した後の金属状態では、これらのパターンの異なる電荷秩序状態がエネルギー的に拮抗していることを明らかにし、さらにこの場合、強い揺らぎを用いたスピン三重項f波超伝導が実現可能であることを見出した。 また電荷秩序が生じたときに、スピン帯磁率などスピン自由度があまり影響を受けないということが知られている。このことに関して1次元の拡張ハバードモデルを用いてスピン自由度に対する電荷秩序の影響というものを調べた。U→∞の極限においてスピン電荷分離型の波動関数を用いて基底状態を調べると、有効交換相互作用は最近接斥力相互作用Vによって抑えられ、帯磁率が増加することが分かった。さらにT=0で電荷秩序が発生する臨界点において、帯磁率には際だった特異性が現れない。これは電荷秩序転移がBKT型の転移であるためである。この結果は臨界点近傍で、電荷揺らぎが非常に重要な働きをしており、電荷秩序がスピン自由度に対して大きな影響を及ぼさないことを意味している。
|
Research Products
(3 results)