2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小形 正男 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60185501)
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Keywords | 有機導体 / 電荷秩序 / フラストレーションによる量子融解 / 電荷ゆらぎ / f波超伝導 |
Research Abstract |
本研究では、分子性導体中の電荷秩序状態近傍での電荷の自由度に着目して、それの引き起こす特異なダイナミクス、および超伝導に関する理論的研究を行うことを予定している。 有機導体における電荷秩序の起源については、オンサイト斥力Uに加えて、最隣接クーロン相互作用Vが重要であると考えられている。もし最隣接クーロン相互作用Vどうしの間に幾何学的フラストレーションの効果があると、2つの相互作用はお互いに異なる電荷秩序状態を安定化しようとして競合する。この場合、電荷秩序が融解する可能性がある。これについて有限系のハミルトニアンの厳密対角化によって調べ、2つの相互作用が拮抗するかなり広いパラメータ領域において、電荷秩序状態が量子融解し金属化した状態が現れることを見出した。さらに、これらに関する理論的研究を網羅したレビューをまとめた。 また、具体的にθ-(BEDT-TTF)_2Xでは、三角格子のために最近接相互作用Vにフラストレーションが生じている。今年度は前年度に引き続き、変分モンテカルロ法を用いて量子融解が起きたあとの金属状態について詳しく調べた。その結果、ストライプ型の電荷秩序状態と3倍周期の電荷秩序状態の2つのパターンがエネルギー的に非常に拮抗していることを明らかにし、さらにこの場合、強い揺らぎを用いたスピン三重項f波超伝導が実現可能であることを見出した。この結果について論文にまとめた。 また、今年度からN本鎖くりこみ群という手法を用いて、擬1次元系における超伝導機構、特にスピンゆらぎと次元性の効果についての研究を開始した。具体的な例として(TMTTF)2SbF6という有機導体を取り上げ、最近の超伝導転移温度Tcの奇妙なふるまいについて、N本鎖くりこみ群を用いて研究を開始した。
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Research Products
(3 results)