2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15073210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小形 正男 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60185501)
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Keywords | 有機導体 / 擬1次元系 / SDW相 / スピンゆらぎ / 超伝導機構 |
Research Abstract |
本研究では、分子性導体中の電荷秩序状態近傍での電荷の自由度に着目して、それの引き起こす特異なダイナミクス、および超伝導に関する理論的研究を行うことを予定している。 TM系とよばれる擬一次元電子系を持つ有機導体では、多くの物質が圧力下で超伝導になることが知られており、超伝導相はSDW相に隣接している。一般に、ある超伝導相が何らかの秩序相近傍に現れたとき、その超伝導は秩序相のゆらぎを媒介して実現していると考えられる。ゆらぎの振幅は秩序相から離れるにつれ小さくなるため、超伝導転移温度T_cも秩序相から離れるにつれ下がることが自然に期待される。たとえば、擬1次元有機導体(TMTSF)_2PF_6では、SDW相に隣接して超伝導相が現れ、加圧によりSDW相から離れるにつれそのT_cは徐々に下がる。このふるまいは、スピンゆらぎを媒介する超伝導の典型的なものとして理解されてきた。しかし最近、類似物質である(TMTTF)_2SbF_6において、SDW相から離れてもT_cは上昇し続けるという奇妙なふるまいが観測されている。このふるまいは、通常のスピンゆらぎ機構からでは理解できない。 このことを理解するために、新たに開発されたN-鎖数値くりこみ群の方法(N-chain RG)を用いて、擬1次元系における超伝導機構、特にスピンゆらぎと次元性の効果について調べた。この方法では、1次元特有のゆらぎをくりこみ群によってかなり正確に扱うことができるので、通常のRPAなどの手法に比べて正確であると考えられる。その結果、スピンゆらぎに加え次元性の効果を考慮に入れれば、たとえSDW相から離れてもT_cがあがり続けることが明らかとなり、実験をよく説明することを見出した。また擬1次元系の量子モンテカルロシミュレーションによる数値的研究を開始し、N-鎖数値くりこみ群の結果を補強する結果が得られた。
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Research Products
(6 results)