| Research Abstract |
【目的】近年,小児の食物アレルギーは,消化管を介する免疫機能の異常(Th1/Th2アンバランス)が原因となり,現代病として大きな社会問題になっている.本研究は,これまでの知見を基礎とし,乳酸菌DNAの消化管免疫を介するアレルギー発症防御機構を解明し,乳酸菌DNAによる新規機能性食品"アレルギー発症予防食品"の創製を目指した,戦略的基礎研究を行うことを目的とする.
本年度は,ブタToll様レセプター(TLR)9のヒト細胞株における発現細胞の構築と同細胞を用いた免疫活性評価系の構築を行い,乳酸菌DNAの免疫活性を評価する.さらに,乳酸菌DNAモチーフのTLR9を介するアレルギー発症防御関連サイトカインの生産について検討する.
【方法】Toll様レセプター9のヒト細胞株による発現細胞の構築を行うため,HEK293を用いて昨年と同様にして,ブタTLR9強制発現細胞を構築した.構築した強制発現細胞を用い,サイトカイン誘起に関わるNF-κBの転写活性を指標としたレポーターアッセイ法を融合した.本アッセイ法により,乳酸菌DNAモチーフのNF-κB転写活性を測定した.さらに,サイトカイン誘起について,定量的PCR法およびELISA法により評価した.
【結果】ヒト細胞株HEK293を用いてブタTLR9トランスフェクタントの構築に成功した.本トランスフェクタンにNF-κBの転写活性を指標としたレポーターアッセイ法を融合することができた.定量的PCR法およびELISA法による解析から,乳酸菌由来のオリゴDNAが強いTh-1免疫誘導能を有することが判明した.このことは,乳酸菌DNAモチーフがTLR9を介してアレルギー発症防御能を発揮する可能性を示すものである.また,本研究で得られたトランスフェクタントが免疫活性を有する乳酸菌DNAの優れた評価系として利用でき,本評価系により選抜されたDNAを有する乳酸菌を用いて,免疫機能性食品を開発することが可能であると期待される.
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