2004 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌におけるがん化シグナルの特異的活性化・制御機構の個別的ならびに網羅的解析-β-カテニンシグナル伝達関連遺伝子群を中心に-
Project/Area Number |
15390391
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
源 利成 金沢大学, がん研究所, 教授 (50239323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 豊 金沢大学, がん研究所, 助教授 (10179541)
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Keywords | 大腸がん / β-カテニン / がん化シグナル / ユビキチン化分解 / β-TrCP E3ユビキチンリガーゼ / NF-κB / 分子標的 |
Research Abstract |
本研究では,ヒト大腸癌の悪性度に影響をおよぼすβ-カテニンがん化シグナル特異的活性化の分子機構をがん病態との関連から個別的ならびに網羅的に究明し,得られる成果を大腸癌の発生進展過程の解明と診断・治療に応用することを主目的とする.一連の解析から得られる知見に基づいて,大腸癌の悪性度や予後の分子診断法を開発することも目指している. これまでに,ユビキチンシステムが癌遺伝子や癌抑制遺伝子産物の発現制御を介して発がん・進展に関与することが示されている.β-カテニンがん化シグナル制御の本質もユビキチンシステムに起因し,我々が同定したβ-TrCP(β-transducin repeats-containing protein)はWnt/β-カテニンシグナル依存的に誘導され,β-カテニンの発現をネガティヴフィードバック的に制御するとともに,IκB(inhibitor of NF-κB)のユビキチン分解を促進することによりNF-κB(nuclear factor-κB)シグナルを誘導することを見出した(Mol Cell 2000;5:877-82).このような背景から今年度は,大腸癌病態とβ-カテニンがん化シグナル制御におけるユビキチンシステムの関与を明らかにする目的で,大腸癌を対象にβ-TrCPの発現(mRNA,蛋白)と局在を解析し,β-カテニンやNF-κBの活性化,アポトーシス,臨床病態との関連について検討した.大腸癌45例を解析した結果,β-TrCPの発現亢進を認めた25症例(56%)ではβ-カテニンの活性化が高頻度であり,アポトーシスは有意に減少していた.これらの腫癌においてβ-TrCPはβ-カテニンや活性化型NF-κB(p65)とともに核内に局在していた.β-TrCPの発現亢進は臨床的には癌細胞の脈管侵襲や遠隔転移の発生と有意な相関を示した.非腫瘍性HEK293細胞とは対照的に,β-カテニンが活性化されている大腸癌細胞株ではβ-TrCPの発現は亢進し,両者の相互制御関係の破綻を示す.以上の結果から,β-TrCPはβ-カテニンおよびNF-κB両がん化シグナルを統御(integrate)することにより,大腸癌の進行と悪性度や臨床病態に影響を及ぼすことが明らかとなった.これらの成果はβ-TrCPとその関連因子を標的にするがん分子診断や治療法開発の基盤になることが示唆された.
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Research Products
(7 results)