Research Abstract |
神経因性疼痛の病態として,末梢神経レベル,中枢神経レベルで諸説言われており,その中の一つとして,末梢経での炎症が考えられている.その炎症では,マクロファージが損傷部位へ浸潤し,炎症性サイトカイン(IL-1、TNF-αなど)を放出すると言われている.この炎症性サイトカインと疼痛反応との関係については,様々な検討がなされているが,疼痛反応とマクロファージとの関係について検討したものは少ない.そこで,本研究では,絞扼性神経損傷(chronic constriction injury : CCI)モデルマウスを用いて,光熱刺激に対する逃避反応(以下逃避反応)と,CCI術を行った坐骨神経へ浸潤してくるマクロファージとの関係について検討した.対象はC57BL/6NCrj雄性マウス23匹(週齢10週,手術時体重21.51±1.24g)とした.対象の左坐骨神経に対してCCI術を行い,術前および術後で1週から3週まで,毎週行動観察を実施した.F4/80抗体(CEDARLANE)を使用して,ABC法でマクロファージを染色した.行動観察は,術側から非術側の逃避反応時間を引いたものをDifference Score(以下D.S.)とした.D.S.は術前と比較して術後1,2,3週で有意に低値を示した.マクロファージの浸潤数は,術後1週で最多となり,術後2,3週と徐々に減少することが観察され、統計学的にも術後1週と比較して,術後2,3週では有意な差が認められた.なお,非術側にはマクロファージの浸潤は観察されなかった.先行研究から、CCI術後にマクロファージ数は8から12日でピークに達したと報告されている。本研究では、術後1週でピークに達しており、先行研究とは異なる結果となった。これは一次抗体の違いと考える。本研究で採用したF4/80抗体はマクロファージおよび単球に特異的であるが、先行研究で使用した抗体はリンパ系細胞に対しても反応するものであった。そのため、本研究は術後1週での逃避反応とマクロファージとの関係をより明確に示したと考える。しかし,術後2,3週では,逃避反応はマクロファージよりもむしろリンパ系細胞が逃避反応に関与しているのではないか、と考えられた。今後は,マクロファージが分泌するIL-1やTNF-αの経時的変化と逃避反応との関係についても検討する必要があると考えられる.現在、TNF-α抗体を用い、ウエスタンブロットで定量化を免疫組織化学で定性化を検討中である。なお、この研究は第9回理学療法の医学的基礎研究会学術集会(仙台)において発表した。 また、神経因性疼痛に観察される熱過敏性に対するマクロファージの影響を観察することを目的として,CCIモデルを正常マウスおよび破骨細胞が存在せず,マクロファージの減少しているop/opマウスを対象として作成し,熱過敏性に差が出現するかどうかについて検討した.その結果,術前と比較して術後1週から4遍まで正常マウスとop/opマウスの熱過敏性の変動に差は認められなかった.これより,本研究において測定した期間においてはマクロファージが熱過敏性に与える影響は少ないと考えられた,
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