2006 Fiscal Year Annual Research Report
近世日本本草学のフィールドノート「採薬記」の基礎的研究
Project/Area Number |
15500662
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平野 満 明治大学, 文学部, 教授 (10189855)
|
Keywords | 山本亡羊 / 山本榕室 / 山本読書室 / 採薬 / 本草学 |
Research Abstract |
平成18年度の成果として『山本読書室採薬年表』を書いた(原稿提出済み,2008年3月刊行予定)。本稿は小野蘭山の門人で、寛政11年に蘭山が江戸に出て以降、京都の本草学界の中心として研究に、また後進の育成に活躍した山本亡羊(家塾を「読書室」という)と息子たちによる採薬の事跡を年表としたもの。師の蘭山が、門人村松標左衛門に宛てた書簡に本草研究は「採薬を先務とす」と書いたが、年表から山本父子が盛んに採薬している様子が判明する。この意味でも山本読書室の本草研究は正しく蘭山の学を継承したものであった。亡羊の畢生の業績は刊行されずに終わった『格致類編』125巻である。『格致類編』は稲生若水(丹羽正伯増補)『庶物類纂』を意識して編纂されたが、表面上は必ずしも明確ではないけれども、単に漢籍の引用から成るものではなく、引用文の選定や簡略ながらも付される解説の背後には採薬での実物観察の経験が大きな役割を果たしているはずである。 また、近世から明治初期にいたる採薬記録の所在目録稿を作成しつつある。まだ完全なものとはいい難いが、現時点で出来上がった所在目録を本研究成果報告書で報告する。調査はさらに続ける予定だし、常に追加の可能性があることはいうまでもない。 蘭山と亡羊の採薬記の書誌的検討は終えた(水谷豊文の採薬記についても同様の書誌的検討を加えつつある)が、本草研究の成果に背後に積み重ねられた採薬の経験が研究成果にどのように生かされているかを検討することが今後の課題である。
|
Research Products
(1 results)