2004 Fiscal Year Annual Research Report
インドにおける合理思想と宗教的寛容精神の出会い-ジャヤンタ・バッタの万教同根観の分析を中心に
Project/Area Number |
15520046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸井 浩 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30229603)
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Keywords | インド哲学 / 寛容精神 / 合理思想 / ジャヤンタ・バッタ / 万教同根観 / 六つのタルカ / 六つのダルシャナ |
Research Abstract |
インド文化の一大特質をなす雑多・異質な諸思想を包含しようとする「包括主義」ないし寛容精神が、論理的思考を重視するニヤーヤの学問伝統においてどのように展開したかを文献実証的に跡付けるために、ジャヤンタ・バッタ(9世紀後半=J)の主著『ニヤーヤ・マンジャリー』(NM)その他の関連諸文献を精読して、NMに言及される万教同根観の分析ならびにそれに関連する諸問題の解明をなすことが本研究の主題である。 本年度はNM第4章に展開する「すべての宗教(聖典)に権威が認められる」という見解(sarvAgamaprAmANyavAda)、そしてその一類型である万教同根観を、NM全体の文脈およびJのニヤーヤ学観との関連から分析し、Jはヴェーダ聖典権威論証をニヤーヤ学の趣意としつつも、その論理的証明の限界を自覚しており、それが上記の見解、とりわけ万教同根観を否定せずに紹介するという、調停者的な態度を示す大きな理由の一つだったのではないかと推定した。その成果はICANAS-37(2004.8モスクワ)で口頭発表した。さらにヴェーダ権威論証上重要な概念mahAjanaparigrahaの分析結果は、IAHR(2005.3東京)で発表。なおNMの希少なシャーラダ写本を入手したが、本研究に活用するには至らなかった。一方、Jのヴェーダ聖典権威論証と深く関係するクマーリラの『シュローカ・ヴァールッティカ』「教令章」における真知論の分析の前提となる綿密な原文解読はほぼ完了し、その訳注は本研究の成果報告書で発表する。このほか関連する諸問題の解明として、NMにおける「六つのタルカ」の意味内容の解析、および初期ニヤーヤの論理学の展開に関わる「upanayaの意義付けとliGgaparAmarza」の分析を行い、その成果はそれぞれ論文で発表した。
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Research Products
(3 results)