2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520119
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
曾根 博義 日本大学, 文理学部, 教授 (90120493)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 健一 日本大学, 商学部, 教授 (30149158)
藤本 寿彦 奈良大学, 文学部, 教授 (50330527)
|
Keywords | モダニズム / 『椎の木』 / 百田宗治 / プロレタリア文学 / 『日本文芸史 第七巻』 / アヴァンギャルド |
Research Abstract |
(1)3名それぞれ、過去2年に引き続いて、以下のような研究実績をあげることができた。 (2)代表者の曾根博義は島崎藤村・蓊助関係資料、戦前の左翼運動取締極秘資料、『改造』等戦前の総合雑誌、その他の資料を購入し、厚生閣、素人社、金星堂などのモダニズム出版社、『新潮』『椎の木』その他のモダニズム文学関係雑誌の調査、研究を行った。その成果の一部として、裏面に掲げたように、『日本文芸史第七巻』の分担執筆、厚生閣、素人社などについての論文を発表して、新たな資料を発掘・紹介し、新知見を発表した。さらに『椎の木』その他の雑誌の未見号をいくつか発掘したが、これはやがて総目次発表の際に役立つはずである。 (3)研究分担者の佐藤健一はプロレタリア詩関係の資料、並びにプロレタリア文学運動において重要な役割を果たした徳永直の著作を購入し、同じく『日本文芸史第七巻』に大正末期から昭和10年代までの詩を中心とした表現史をまとめて顕著な成果をあげた。そのような研究を通じて、プロレタリア文学を日本モダニズムの一亜種と見なし、そこにおいて近代日本語の意味体系から逃れたり、壊したり、それを組み替えようとするさまざまな実験が行われていることを明らかにしつつある。さらにそのような表現革新は単に詩だけに限られるものではなく、中野重治や徳永直らのプロレタリア小説、さらには同時代から戦中・戦後にかけての坂口安吾らのモダニズム小説や評論にもつながっていることを確認しつつある。 (4)同じく研究分担者の藤本寿彦は百田宗治、北園克衛、丸山薫、阪本越郎、衣巻省三らモダニズム詩人たちの詩集、詩論、草稿などの資料を購入し、東京の国立国会図書館、日本近代文学館などに4度にわたり出張して調査を行った。その成果の一部は、『日本文芸史第七巻』『日本のアヴァンギャルド』その他の共著として発表されたが、それらを通じて昭和初年のモダニズム詩の運動のなかで果たした百田宗治の役割の大きさを再認識しつつある。これは百田宗治の主宰した『椎の木』に関する曾根の調査と合わせて、さらに大きな共同研究の成果をもたらすであろう。
|
Research Products
(6 results)