2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520148
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
秋山 学 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教授 (80231843)
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Keywords | ギリシア・カトリック教会 / ビザンティン典礼 / バジリオ会 / セイチェーニィ図書館 / パンノンハルマ修道院 / エルデーイ / トリアノン条約 / ハプスブルグ家 |
Research Abstract |
平成15年度より起こされた3年間にわたる本研究計画は,今年度第2年次目を迎えた.昨年度と同様,今年度も春/大型連休/夏の3度にわたって東欧域に足を運び,現地視察と資料収集に携わった.昨年度はまず東欧の広い地域を視察してその学的・宗教的現況を把握することに努めたが,今年度は春にハンガリー・ニーレジハーザのギリシア=カトリック・アタナズ研究学院,夏に同国デブレツェン大学,そして春と夏の2度にわたり同国北部ダーモーツのビザンティン典礼バジリオ会修道院に滞在し,ギリシア・カトリック教会の実情を実体験することに努めた.また同国首都ブダペシュト・セイチェーニィ国立図書館の正式会員となり,同国の厚い学的蓄積に対して現地語と現地資料を駆使した研究を進めることができた.大型連休には,同国西部の世界遺産でもあるベネディクト会・パンノンハルマ修道院を訪ねた.さらに,春にはルーマニアのクルージュ・ナポカにも足を運び,歴史的に旧ハンガリー/現ルーマニア領に属するエルデーイ(トランシルヴァニア)地方を視察した. これらの実地調査を通して,(1)東欧域に根強い「ギリシア・カトリック教会」の実情は,1920年にトリアノン条約が締結されるまでの旧・大ハンガリー領(さらには旧大オーストリア領)を単位とし,広域的にその歴史を捉えねば理解不可能なこと(2)この宗教的現象はハプスブルグ家の力そのものに起因し,大きな寛容性と強いイニシアティヴをもってはじめて成し遂げられえた歴史上稀有な証例であること(3)その根底にはローマの強い吸引力が厳然として存在し,それは同地域へのラテン語教育の普及度をもって如実に示されること(4)ロマンス語を用い正教圏に属するルーマニア人よりも,むしろアジア系でカトリックの根強いハンガリー人の方がラテン語の素養に厚く,総じて文化水準も高いことから,西洋古典文化の普及は,民族的素地よりも教育と宗教性に負う部分が大きいことなどが明らかになった.
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Research Products
(7 results)